――療病院の構想から設立まで――

 一年目 療病院の設立に向けての人材の選定と起用に費やされる。ゴンドールから資料を借り受けるため、選定された人々はゴンドールの文字を覚えるところから始める。

 二年目 建物の設計案と建設地の選定及びミナス・ティリスへ留学する者の選定が行われる。しかし最終責任者であるが出産のため、一時的に作業が中断される。

 三年目 留学生の第一陣がミナス・ティリスへ赴く。エドラスでは建物の設計図ができたものの、建設地と費用の捻出をめぐって話がまとまらず一時中断する。

 四年目 人口の増加にともない、外郭を拡張する案が出る。その折、街路の整備も行って療病院用の土地を確保するのが最良という見方が強まったが、が二人目の出産につきまたしても療病院関係の作業は中断。

 五年目 外郭の拡張工事開始。

 六年目 工事の続行。

 七年目 まだ続行中。留学生の一部が帰国する。同時に、ゴンドールから医学、薬学、看護学を教授する一行が到着する。

 八年目 工事はまだ終わらない。仮設の療病院が作られ、研修を兼ねて仮運営される。

 九年目 工事の完成。療病院の建設が正式に着手される。同年、完成する。




「長かったわよね」
 完成した建物を前に、は感慨深く言った。
「そうだな、だがとうとう出来上がった」
 隣に立つエオメルは嬉しげに笑みを浮かべた。
 見上げる建物は屋根が高く、頑丈な柱には彫り物が施され、白い漆喰壁が青空に映えていた。
 療病院建設は昨日、最後の工程が終わったばかりだった。
 一夜明けたこの日は、備品の取り付け作業に入っている。寝台用の木枠や藁マット、診察台や机など、大小の品々を抱えた人々が、何人も出入りしていた。
 作業監督をしている男が大声で指示しているのを聞きながら、王と王妃は今後のことを話し合った。
「滞在しているゴンドールの方々は、一部がお帰りになるのだったな?」
「ええ、研修はもうずいぶん行ったので、半数はお帰りになって、あとは軌道に乗るまでのお手伝いをしてくださるということよ。ただ、お残りになる方も年単位で故郷を離れているわけなので、あまり長くはいらっしゃらないと思うわ。かわりに新しい方たちが来るということだけど……」
「そうか、せっかく親しくなれたのに残念だが、仕方あるまい。故郷を長く離れていれば、大の男でも家族が恋しくなるものだからな」
「次に来てくださるのは、どんな方たちかしらね」
「そうだな。それは少し楽しみでもあるな」
 そんなやりとりがあってから五日後のこと、エオメルは早馬の使者の報告を受けていた。
 それによると、帰国する留学生と共にゴンドールから医師団の一行がエドラスに向かっているということだった。その中には療病院設立を祝うためにエレスサール王から派遣された使者もいるという。
 驚いたエオメルは急いでを呼んだ。
「アラゴルン殿の使者が?」
 呼ばれたは仔細を聞くと、意外そうな面持ちになった。
「まあ、思ってもみなかったわ。わたしたちにとっては療病院の完成をそれは待ち望んでいたことだけれども、でもやっぱり内輪でのおめでたいことだと思っていたもの。それなのにわざわざ御使者まで遣わして祝福してくださるなんて」
「ああ。私も意外だったよ。だがそういうことならばきちんとした宴席を設けなければなるまい。今から用意をして間に合うかな?」
 心配げにエオメルは眉を寄せる。
「もともと関係者での席を設けるつもりでしたからね。大丈夫、なんとかなるでしょう」
 はにっこりと笑った。
「すまないな、急に」
 彼女が大丈夫だと言うのならば大丈夫なのだろう。エオメルは頼もしい妃の言葉に安堵した。




 翌日、留学生とゴンドールからの訪問団が到着した。総勢二百人ほどである。騎士たちは数日滞在して、引継ぎを終えた医師らを護衛しつつ帰国することになっていた。
 エオメルは彼らを出迎えながら、使者は一体誰だろうかと思いを巡らせていた。彼は使者がいる、ということしか聞かされていなかったのだ。
 と、医師団の中に見覚えのある顔が混じっていた。
「アムロソス殿?」
 エオメルは思わず叫んだ。彼の声に、アムロソスは破顔する。
「エオメル王、お久しぶりです」
 そこにいたのはまぎれもなく、ドル・アムロス大公の三男であるアムロソスだった。エオメルは度々ゴンドールへ赴くことがあったが、医師と国王ともなるとなかなか接点はなく、これが久方ぶりの再会であった。
「えっ、アムロソス様?」
 も驚いて叫んだ。こちらはエオウィンとの結婚式以来会っていないのである。
「レオフォスト王妃も……えー、お変わりなく」
 にこやかに笑んでいたアムロソスだったが、を見るや一瞬呆気に取られたような顔になった。その原因を察したエオメルは、さもありなんと内心で同情する。
 はあまりにも外見が変わらないのだ。本人は相応に年を取っていると思うと言うが、とてもそうは見えない。もともと実年齢に比べて幼く見えていたものだが、最近はさらにその開きが大きくなったように思える。
 だがそんな反応に慣れっこになっている は、少しも気にした様子もなくにこにこと笑っていた。
「本当にお懐かしいこと。十年近くお会いしていないというのに、少しもそのような気がしないわ。それにしてもアムロソス様がいらしてくださるなんて、とても驚きました」
 気を取り直したアムロソスは再び笑顔になる。
「どうしてもローハンの療病院が見てみたくて、志願したのです。正直に申しまして、私はレオフォスト殿が途中で諦めてしまうと思っていたのですよ。このような大事業を成し遂げるには骨が折れるもの。ましてや王妃となられた方なのですから、普段からしてお忙しいことでしょうし。しかし此度の完成を聞きまして、いても立ってもいられなくなったのです」
 彼はに向かって一礼し、エオメルとはしっかり握手をした。
「しかしドル・アムロス大公の子息である貴方がいらしたということは、もしやエレスサール王の使者というのは……」
「ええ、私のことです。まだ医師としては未熟な私を指導医として派遣することは無謀である。どうしてもというのなら、何か他にお役に立つことをすべしと父が申しまして。それで王が私にこのような名誉ある役目をお与えくださったのです」
「そうでしたか。しかしアムロソス殿は医師なられて十年近くなるはずでしょう。未熟であるとは、大公殿も手厳しいことだ」
「いえ、そのうちの半分以上は研修医期間でしたから、医師になってからはまだ五年も経っていません。まだまだ半人前ですよ」
 謙遜した様子もなく、アムロソスは言った。
 それから一向と関係者は館に集まり、それぞれの労をねぎらう宴が開かれた。エオメルは留学生へは無事の帰還を祝い、新たに訪れた一行へは長旅の疲れを癒してほしいということを、帰国する医師たちには長い間の援助への感謝を、またしばらく残る医師らには、もうしばらくの間よろしく頼むという言葉をかける。
 アムロソスはエレスサール王の名代として、有意義な社会的施設である療病院の完成に祝辞を述べた。
 乾杯が終わると、広間は堅苦しい雰囲気から一転して陽気になる。互いに杯を進めあい、次々と樽が空になっていった。
 秋に仕込んだ麦酒や葡萄酒はどれも出来がよく、また脂のしたたる焼肉や詰め物をした丸のままの焼き鳥などは男たちの食欲を大変誘った。微笑みながら客人の一人ひとりに挨拶をしてまわっていたは、その様子に内心非常にほっとしていた。というのも、酒類はともかく、料理は間に合うかどうか難しい瀬戸際だったからだ。エオメルに大丈夫だと請け負ってしまった手前、出来ませんでした、では済まない。ゴンドールからの使者もいるのでエオメルの面子を潰してはなるまいと必死で時間と戦ったのだ。
(本当に、間に合って良かったわ)
 肩の荷が下りたせいで、一層彼女はにこやかになっていた。
 それから数時間が経ち、酒も料理も充分に堪能した客人たちは、外の風に当たりに行ったり寝に行ったりと、一人また一人、広間からいなくなっていった。
 そろそろ片づけをしようかとが考え始めた頃、乳母が困惑したように近付いてきて耳打ちをした。
「メドゥーナがぐずっているの?」
「はい。どうしても母上様にお会いしたいとおっしゃって。シンク姫様がお姉さまらしくメドゥーナ様をたしなめているのですが、効果もなく……」
 乳母なのに姫を泣き止ませることができなかった至らなさに消沈しながらも、彼女はに少し子供部屋に来てくれないかと嘆願した。
「あら、まあ」
 メドゥーナはまだ五歳。姫らしい振る舞いをしろといっても、まだ難しい年なのだ。
 少しあやして寝かしつければすぐに戻れるだろうと踏んだ は、夫と客人――彼の隣に座っていたのは、アムロソスだった――にしばし席を離れると断る。
「何かあったのか?」
「ええ、ちょっと」
 宴とは直接関係がない用事での退席なので、は言葉を濁す。しかしエオメルは理由を聞きたがった。アムロソスがしっかり二人の会話を聞いていたので、うやむやにするのは心象が良くないと考えたからだ。
 仕方なくは理由を話す。するとアムロソスは楽しげな顔になって会話に混ざってきた。
「ああ、そういえばそちらは姫君が二人いらしたのでしたね。姻戚とはいえ、私にとっても姪になります。後でご挨拶をさせていただいてもよろしいでしょうか」
「おお、もちろんだとも。そうだ、なんなら今連れてこさせましょうか、なあ
 エオメルは可愛い娘たちの話題に調子付く。しかしは、
「こんな酔っ払いだらけのところに子供を連れてくるなんて、できません」
 とあっさりと却下した。
 男の子ならばともかく女の子であるので、養育に関してはの言を尊重している彼は、気勢がそがれた不満を堪えて大人しく引き下がった。
 アムロソスも同意する。
「それもそうですね。こんなでかい男が酒臭い息をしながら近付いてきたら、怖がってさらに泣いてしまいそうですから」
 彼はに早く王女方のところへ行ってくださいと促した。一礼をしては広間を後にする。
 話の流れで二人の男は子供談義に花を咲かせた。
「いや、実際羨ましいなあと思っているんですよ。我が家はどうも男ばかり生まれる家系のようで、兄たちのところも妹のところも、従兄のところも皆男の子ですからね。家の存続のために必要とはいっても、これだけ男ばかりだとつまりませんよ」
 彼の従兄とはファラミアのことだ。つまりエオメルの義弟のことでもある。あちらにはエオメルの長女シンクと同年の男の子がいるのだった。
「しかし女の子も大変ですよ。可愛いですが、先のことを考えると今からもう気が重くて。いつかは嫁に行ってしまいますからなぁ」
 エオメルは渋面を作ったが、それは話をより面白くするための誇張ではなかった。彼はときおり、娘たちが遊んでいる様子を眺めながらも、いつかはいなくなってしまうのだと思うと本当に悲しくなってしまうのだった。きっと妻も同じ気分になるだろうと一度聞いたことがあるのだったが、彼女は一度もない、と言った。女親はあっさりしているものだと彼は妙に落胆したものだった。
 アムロソスはがっかりと肩を落としたエオメルを気の毒そうに眺める。
「私はまだ一人身なのでエオメル殿のお気持ちはわかりかねますが、女の子というのはやはり家族の中でも特別な位置づけにいるのだと感じたことはありますよ。兄たちが結婚したときにはなんとも思いませんでしたが、ロシリエルが嫁に行ってしまった時にはさすがに寂しくて仕方がありませんでしたからね」
「あー、確かロシリエル殿はピンナス・ゲリンの……」
 ふいに昔の見合い相手の名前がでてきたので、エオメルは端切れが悪くなってしまった。
 過去のこととはいえ、傷つけてしまったことには変わりない。雨の日に古傷が痛むように、彼の心にもまた、あの時に感じたのと同じ罪悪感が疼いていた。
「ええ、故ヒアルイン公のご子息と六年前に結婚をしました」
 アムロソスは屈託なく答える。しかしエオメルは、彼のその屈託のなさが本心からのものなのか、それともエオメルを気遣ってのものなのか判断がつかず、先を続けるかどうか迷った。
 幸せであるのならばいいが、それを聞いてもよいのだろうか。しかし……。
 エオメルがぐずぐずしている間に、アムロソスが再び口を開いた。
「まあ、最初は彼と結婚をすると聞いたときには、あなたに失恋したことをまだ引きずっているのかな、とも思いましたがね」
 ぎくりとエオメルは身を強張らせた。それはエオメル自身も思っていたことだったからだ。ピンナス・ゲリンの領主は、ゴンドールでは珍しい金髪の家系だったのだ。イムラヒル大公もまた金髪だったが、彼の子供たちは全員が金髪というわけではない。アムロソスは茶が濃く、ロシリエル自身は黒髪だ。
 それだけではない。ピンナス・ゲリンはその名の通り緑が旗印として使われているところだ。
 金と緑。顔立ちが似ているというわけではないが、この共通項はどうにも気にかかっていたのだった。
 彼の反応に、アムロソスはにやりと笑う。
「実際はそうではないということがわかりましたが」
「そ、そうなのですか」
 冷や汗を流しながらエオメルは相槌を打った。
 ちろり、とアムロソスはエオメルを見やる。内心面白がっているのがありありとわかる表情だった。
「知りたいですか?」
 ぐっと言葉が詰まったエオメルだったが、麦酒を流し込んで落ち着きを取り戻すと腹を括る。
「ええ」
 アムロソスはふと目を伏せて杯に唇をつけると、軽く喉を湿らせてから話し始めた。
「そもそもの始まりは、我が従兄の結婚式の時で――」
 エオメルは思わず目を丸くした。それは自分とロシリエルの見合いがあった時のことではないか。
 くすくすと笑いながらアムロソスは頭を振る。
「からかっているわけではないのですよ。本当のことです。実は、帰国する直前に彼が直接ロシリエルに結婚の申し込みをしてきたのですよ。帰り際で、ごたごたしていたところなので、我が方も大変混乱しました」
「そ、そんなことが……」
 エオメルは呆気に取られた。
「ローハンの方々は午前のうちにお帰りになりましたからね。とにかく、彼はファラミア公の結婚式に出席していたロシリエルに一目で心を奪われたのだが、エオメル王との婚儀が進んでいると噂に聞き、一端は諦めようとしたのだそうです。ところが大どんでん返しがあって、結局その話は流れてしまった」
 うん、とエオメルは頷いた。
「ピンナス・ゲリンとドル・アムロスはそれほど距離があるわけではありませんが、頻繁に行き来するほどの交流があるわけではない。もたもたしていたら別の男に取られてしまう、機会があるとしたら今だけだ、とこう思いつめたようでして」
「それで、ロシリエル殿はどうされたのです?」
「とにかくあの時は失恋したばかりでしたから、当分そのようなことは考えたくないと断りましたよ。父も、いくら焦っていたとしても、大公女への求婚をこのように手順も踏まずに行うとは何事だ、とお冠で」
「うーむ」
 それなのに結婚したということは、何かものすごいことでもあったのだろう。この話がどのような結末を迎えるのかと、場違いにもわくわくしながらエオメルは聞いていた。
「結局父は近しい領地の者同士として、手紙のやりとりをすることだけは認めたのです。とはいえ、ロシリエルがその手紙に返事を書くかどうかは彼女自身に決めさせる、と。ロシリエルもそれが公女として必要なことならば書くと受け入れました」
 つまり、あまりにもあからさまに結婚を迫るような手紙ならば無視することもある、ということだろう。となると、それこそ当たり障りのない内容のものしか書けまい。そしてそこにそれとなく彼女の気持ちを動かすようなことを紛れ込ませるのだ。美しい詩を書くとか。エオメルにはとてもできそうにない芸当だったので、ピンナス・ゲリンの領主には同情した。
「それは随分遠回りな……。それで、その後彼はロシリエル殿とどれくらいお会いできたのです?」
 少し考えてからアムロソスは答えた。
「ミナス・ティリスの式典や残党を平定するための戦などで度々顔を合わせる父や兄たちとは違って、ロシリエルはドル・アムロスを動きませんからね。結局エルヒリオン兄上の結婚式のときにドル・アムロスへ訪れた時くらいでしょうか」
「それなのに話がまとまったのですか?」
 怪訝そうなエオメルに、アムロソスは穏やかな様子で頷いた。
「結局、時間が解決したということですよ。三年経って、新しい恋をしても良いとロシリエルも思うようになったのでしょう。そして彼も彼で、三年も文通しているのに、少しも見込みはないのだろうか、とついにあからさまに妹に真意を尋ねたみたいです。ロシリエルはそれに対して承諾の返事を書きました。父も、以前の怒りをずっと持ち続けることはできなかったようで、ロシリエルが納得しているならば、と許したのです。もともとピンナス・ゲリン公自身は買っていたのですから、その後はとんとん拍子に話が進んだのです」
「そして今はお幸せにしていると?」
 アムロソスは微笑んだ。
「ええ。公はもともとロシリエルを熱愛していましたから、とても夫婦仲は良いということです」
「それは羨ましい。ロシリエル殿は大人しげな方であることだし、喧嘩などしないのでしょうなぁ」
 エオメルはを愛しているのは間違いなかったが、それでも時折くだらないことで口げんかをしてしまい、しばらくの間寒々しいことになることがあるのだ。心から羨んでそう言うと、アムロソスは苦笑する。
「いえいえ、それでもたまには夫婦喧嘩もあるようで、何度か夫に対する愚痴を綴った手紙を受け取ったことがありますよ。まあ、そのすぐ後に仲直りをしたという手紙もきますので、どこの夫婦にもあることなのでしょう」
(そうか、ロシリエルのような女性を妻にしても夫婦喧嘩をするようなことがあるのか。)
 エオメルは新たな発見をするような気持ちでその言葉を聞いた。
「楽しそうね、何のお話?」
 そこへ娘たちを寝かしつけたが戻ってきてにこりと笑う。彼は妻への愛しさがふいにこみ上げてきてしまったので、膝に乗せると娘時代と少しも変わらない滑らかな頬へ口付けた。
「ちょ、ちょっと、こんなところで……!」
 はあせるがエオメルは構わない。三度、四度と口付けてから顔を離すと、
「仲がよろしいのですね」
 とアムロソスが少しも動揺せずに言った。
 まったくこれだから酔っ払いは……などと口の中でぶつぶつ言っていたに、エオメルは、
「懐かしい人の話を色々聞かせてもらったのだよ。お前も聞くか?」
 と誘いをかけた。ロシリエルのことならば、彼女だって気にならないはずはないだろう。
 そして話のすべてを聞き終わったは、「お幸せなのね、良かった」と嬉しげに言った。




あとがきは反転で
……書き終わってみれば、書きたかったことの半分も書けなかったということに気付きました。
療病院のことをもうちょっと書き込みたかったなぁ。しかし、これ以上ごちゃごちゃと書くとまとまりがなくなるしな……。

えと、ローハンの療病院は拡張した大通りの通り沿いにあります。エドラスは丘にある都ですが、位置(というか、海抜か?)としては丁度その真ん中あたり。あまり黄金館に近すぎると麓側からの急患の搬送が大変だし、麓側に近いところに建てると今度は逆の意味で大変だし、ということで。
この療病院ができたことで、ローハンでは一気に文官が増えました。医師と看護士、薬剤師、それと事務官、あとは庭師(薬草園も作ったんです)という感じでしょうか。中つ国はまだまだサウロンの影響が残っているみたいですが、これから戦いは減ってゆくだろうし、そうなると専業騎士は少なくなってゆくでしょうから、それを見越しての雇用創出という意味合いもあります。
あ、ちなみに国営です。税金で運営されているので、基本的に診察は無料です(その分税金は増えたろうけどね……)。

そして今回の話で肝心のロシリエルの結婚相手ですが……オリジナルの登場人物を出すほどの度胸もなかったので、原作に出てきた人の縁者(息子だけど)という非常に安直な設定にさせていただきました。
ピピンがガンダルフと一足先にミナス・ティリスに行っていたときに、ゴンドールの諸地域から援軍がやってくる、という場面があるのですが、ピンナス・ゲリンのヒアルインはそこでちらっと登場しています。
ピンナス・ゲリンは「緑丘陵」という意味みたいです。で、ヒアルインは白皙金髪で、伴ってきた武者たちの衣装も緑だとあって。おお、金色と緑、ローハンとイメージカラーが同じー♪ということで、彼の息子、ということにしました。いや、本人でも良かったのですが、ヒアルイン自身はペレンノール野の合戦で死亡してしまいましたので……。
候補者としては他に、ロスサールナッハのフォルロングの息子というもありました。(フォルロング自身は老人だとしっかり書かれていたので彼自身は候補者ではありませんでした。いや、その前に彼もペレンノール野の合戦で死亡したのですが……)
ここでのロシリエルには、結婚を決意するまでに特別な物語はなかった、と考えています。ただ、失恋して傷ついて、しばらく恋愛はこりごりだと思っていたけど別の男に求婚されてしまったので、相手の身分もあるのでおざなりにはできず、とりあえず友人として手紙のやり取りをしているうちに、傷も癒えてきて、で、相変わらず相手は自分のことが好きみたいで、悪い人ではないし一途に思ってくれているし、と思っていたところへ「どうしても私を愛してもらえないのですか?」とずばっと聞かれてグラリときた、という感じで……。と、特別ではないですよね、こういう展開。ロシリエルにとっては特別な展開かもしれないけど。




目次