「あなたの望みは何?」
わたしはドレスが纏わりついて歩きにくいのも構わず水に入ってエリックに近づく。
衣装が水を吸って重たい……。
彼はわたしの問いの意味を理解できないという風に顔をしかめてみせた。
「何度も言っているだろう。こいつか、私か、今すぐ選ぶんだ」
わたしは首を振った。
「いいえ。あなたはラウルを殺さないわ……」
麻痺してしまったと思うほどの静かな心で、わたしはエリックを見上げた。
「お願い、言って。どうして欲しいの?」
◇ ◇ ◆ ◇ ◇
エリックは答えなかった。
戸惑った少年のようなもろさが彼の面に現れ、落ち着きなく荒い息を繰り返す。
彼の唇は震えていた。
言葉にできない想いをつむごうと懸命になっているのに、肝心の唇が言うことを聞いてくれないようだった。
わたしはもう一歩踏み出した。
怯えたように、エリックは半歩後ずさる。
わたしは腕を伸ばし、エリックの頬を引き寄せ、想いを込めてキスをした。
ラウルを救うためではなく、エリックのために――。
