それから二年後。
再建したオペラ座の記念公演にわたしはプリマ・ドンナとして立った。
こんなに早く再建できたのも、オペラ座のパトロンを続けてくれたラウル・ド・シャニー子爵のおかげだ。
ただ、彼は記念公演にもそのごの通常公演にも足を運ぶことはなかった。
事件後しばらくして沈静化していた騒ぎに再び火がつき、わたしはさまざまな噂や憶測の標的となったが、わたしは直接にしろ間接にしろ、一切そのことについて話したりはしなかった。
わたしに音楽の天使がついていることは絶対に言わない。
◇ ◇ ◆ ◇ ◇
「、私のために歌え―」
「はい、エンジェル―」
そして今日も舞台の幕が開く。


