「〜〜――♪」
『ストップ、もう一度だ』
『もっと余韻を響かせるのだ。最後まで息を吐き続けなさい』
「はい、エンジェル」
「〜〜♪〜♪」
練習はいつも早朝の楽屋で行われる。
エンジェルの指導はとても厳しい。
でも毎日レッスンが終わると、自分でもびっくりするほど上達しているのがわかった。
だけどエンジェルは完璧を求める方だから、どれだけ頑張っても褒めてくれることは……あんまりない。
それがちょっぴり寂しいなって思うのだけど……。
『?』
いぶかしげなエンジェルの声。
はっとして、わたしはぶんぶん首を振った。
「なんでもありませんわ、エンジェル」
『レッスン中にぼうっとするのは感心しないね』
「はい……ごめんなさい」
いけないわ、こんなことを考えているなんて。
エンジェルはわたしに歌を教えに来てくれているだけなのだもの。
それ以上のことなんて望んではいけないのだもの。
『もう一度、最初からだ』
「〜〜〜♪〜〜♪〜〜〜♪♪」
