どれくらい時間が過ぎただろう。
実際にはほんの少しの間なのであろうが、感覚では何時間も黙りこくり、見詰め合っていたように思えた。
「ラウル……。ありがとう。最後まで……」
上手くいえなくて言葉を詰まらせたわたしを、彼はわかっている、というように頷いた。
ラウル……。
わたしはあなたが本当に好きだった。
楽しかった子供時代。いくつもの夢と未来を語り合ったわね。
そのまま大きくなったようなわたしたちは、夢から醒めて現実を歩む時が来たのだわ。
別々の道を……。
もう二度と交錯することはないとしても……。
ラウル、どうか……。
幸せな未来があなたに訪れることを祈っているわ。
虫のいい願いであるとしても、願わずにはいられないわ。
大好きなラウル……。
「さようなら」
わたしは船を降りた―。
