++ サソリをまわすか?バッタをまわすか? ++
映画にすっかり参った春日さんはオペラ座の怪人の原作を読み出しました。
色々違いますが、これはこれで面白いなあと思いながらも読了。
とはいえ、よくわからないところもありました。それは1つには日仏の差でしょうし、もう1つは時代の差というのもあるでしょう。
が、そういうことを差し引いても意味がわからん、というのはあるわけで…。
その最たるはこのサソリとバッタのところでございました。
聖書関係か?とは思いましたが、確証はなく、その意味するところもわからない。が、知りたいなーと思いつめた春日さんはその辺のことが乗っているというので、買いましたよ「THE
ESSENTIAL PHANTOM OF THE OPERA」!(どういう本かというと本文の他に脚注が付いてる本です)
英語なので細かい意味まではわからなかったのですが、3つのサソリとバッタに関係のある事柄が載っていました。
1つ目が占星術のサソリ。
2つ目がイソップ物語の「アリとキリギリス」
3つ目がヨハネの黙示録
です。
「THE ESSENTIAL〜」には簡単な説明しかありませんでしたので、以下は管理人の調べたことです。
サソリ座のサソリというのは月の女神アルテミスがオリオンを殺すために送り込んだものが星座になったものです。アルテミスがオリオンを殺そうとした理由はいくつかあるようで、嫉妬からという説、強姦から身を守るためという説、オリオンが地上のすべての動物を殺すことを恐れたためという説などです。オリオンのかかとを刺して殺したサソリはアルテミスによって星座にされ、さそり座となりました。オリオンも星座になりましたが(これはゼウスの仕業だったと思う)、オリオンはサソリを恐れていつもサソリから逃げようとしているというオチがついてます。管理人、この神話が結構好きです。なにしろ私が見分けられる星座はオリオン座しかありませんから(笑)
神話学者にとってはサソリは冥界の動物で、地中に住み、体が黒く、残酷で、盲目だが官能的なダンスをするといった奇妙な能力を備えた怪物なのだそうです。
占星術的な意味でのサソリは黄道12宮の8番目。占星術の伝統体系としては男性的要素、破壊、オカルトや神秘性、霊感のひらめきなどの概念と結び付けられています。また人間の体でいえば生殖器に対応するとのこと。鍵言葉は「私は欲する」。対応惑星は冥王星。これは1930年に発見された惑星で、つまり暗く謎めいた星であり、占星術師、錬金術師、ドラゴンを狩る者、怪物中の怪物を屈服させる者の星なのだそうです。さそり座は他の星座よりも強く死に結び付けられ、古い自己が「死んで」新たな存在に生まれ変わる能力を秘めています。しかしサソリはいつも勝利を得るとは限らず、民間信仰によれば火の壁に囲まれて自殺するという。
…なんか、すごく(原作の)エリックを彷彿とさせるなあ。
エリックは普通の人間の暮らしがしたい、結婚がしたいと渇望していました。結婚生活というものが何を意味するのかというのは改めて書くまでもないことでしょう。彼の多才性、しかしそれに反する容貌のギャップという点も見逃せません。
エリック=サソリであるとするのなら、クリスティーヌによって選ばれた彼は暗く誰もいないオペラ座の地下での死人のごとき生活を終わらせ(つまりは怪人であるエリックは一旦死んで)、彼が言うところの「子羊のようにおとなしい」無害な存在に「生まれ変わる」のだと、少なくともエリックはそう考えていたのだと考えるのは…うがち過ぎですかね?
さて次の「アリとキリギリス」ですが、「オイオイ、何いってんだよ問題になってるのはバッタであって、キリギリスじゃないだろー?」という声が聞こえてきそうですが、英語ではバッタもキリギリスもgrasshopperですので…。フランス語では"la
sauterelle"で、いなごやバッタのことです。
で、このキリギリス(バッタ)は、まあ、書くまでもないことなのですが、夏中ダンスしたりして、冬への備えをしない先見の明のなさを現しているんだろうということです。うん、書くまでもないよなあ。
また、バッタの中でも群れを作る種類がいることはご存知の方も多いと思います。(世界ビックリ映像系のテレビ番組で取り上げられることがありますよね。中東、アフリカあたりで大量発生したバッタがありとあらゆるものを食い尽くすってやつ)それは昔からのことで、その貪欲さゆえに破壊の象徴となっているのだそうです。
だから、クリスティーヌがバッタをまわした場合には、彼女の先見の明のなさゆえに(それが恐怖から発生していることは疑っていませんが)オペラ座は木っ端微塵になるということが想起されるということなのかなあと思いました。
さて最後のヨハネの黙示録ですが、要約するのもなんですので、書き出して見ます。
第五の天使がラッパを吹いた。すると、一つの星が天から地上へ落ちて来るのが見えた。この星に、底なしの淵に通じる穴を開く鍵が与えられ、それが底なしの淵の穴を開くと、大きなかまどから出るような煙が穴から立ち上り、太陽も空も穴からの煙のために暗くなった。そして、煙の中から、いなごの群れが地上に出てきた。このいなごには、地に住むさそりが持っているような力が与えられた。いなごは、地や草やどんな青物も、またどんな木も損なってはならないが、ただ、額に神の刻印を押されていない人には害を加えてもよい、と言い渡された。殺してはいけないが、五か月の間、苦しめることは許されたのである。いなごの与える苦痛は、さそりが人を刺したときの苦痛のようであった。この人々は、その期間、死にたいと思っても死ぬことができず、切に死を望んでも死のほうが逃げてゆく。(ヨハネの黙示録9−1)
ここでのサソリはサソリとしての出番があるわけではなく、バッタ(いなご)の能力がサソリのようだと書いているわけですので、同一場面とはいえサソリとの関連性は薄くなると言わざるを得ません。ただしバッタの攻撃性は現実のものより強くなっています。そして「大きなかまどから出るような煙が穴から立ち上り、太陽も空も穴からの煙のために暗くなった。」のくだりは崩壊する建物を思い起こさないこともないとは思いますが…。
ああ、なんかこう聖書とかに無理やり関連づけさせているとのってMMRみたいだわ(笑)
個人的には、サソリは占星術のサソリで、バッタは民間伝承としての(イソップ物語も含む)バッタだと考えたいところなんですが、ものがフランスの小説であることを考えれば、やっぱ、聖書のほうなのかなあ。
よくわからん。
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参考文献:「THE ESSENTIAL PHANTOM OF THE OPERA」
「占星術百科」
「図説 世界シンボル事典」
「動物シンボル事典」
「西洋シンボル事典ーキリスト教美術の記号とイメージ」
「聖書」
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