すっと腕を伸ばすと、エリックは怯えたように身体を震わせた。
両頬を手で包み、さする。
そっと仮面を外せば、追い詰められたように揺らぐ彼の眼が現れる。
わたしは彼を引き寄せ、抱きしめた。
エリックは背が高いからわたしがしがみ付いているような格好になってしまったが構っていられなかった。
背中に腕を回すと彼はびくりとした。
心臓がものすごい速さで打っているのが感じられる。
「あなたの望みは何?」
尋ねても返事はなかった。
顔を動かして見上げると、彼は呆然と目を見開いていた。
目の中にはわたしが映っているが、きっと見えていないだろう。
唇は小刻みに開け閉めされ、声にならない声が漏れ出ていた。
長い長い沈黙のあと、エリックはぎこちなく腕を動かしてわたしの胴にまわした。
抱きしめるというよりも、すがりつくように、強く。
「……。……」
何度もわたしの名を呼び、エリックは涙を流した。
点々と滴ってくる塩辛い滴がわたしの額に落ち、頬を伝ってゆく……。
