「どうしても行くのか……?」
エリックが不安げな表情で見下ろしてくる。
「ええ、このままではいけないもの」
◇ ◇ ◆ ◇ ◇
強く止めるようなことはしなかったが、彼は最後まで気が進まない様子でわたしを見送った。
ラウルに婚約を破棄してくれるよう、話に行かなければならない。
気まずくてずっと先延ばしにしていたけれど、もう限界だった。
このまま彼に会わないよう隠れ続けるなど無理な話だし、わたしのことを本当に心配し、愛してくれた幼馴染に本当のことを打ち明けないことには終わったことにはならないだろう。
……ラウルにはひどいことをしたと思っている。
一生許されなくても仕方がない。
話し合いの場にはエリックはこない。
あの二人が顔を合わせたら、血を見るのは明らかだもの。
エリックのことだからその場にいないように見えてもどこかに隠れている可能性もあったから、ロザリオを握って誓わせたのだ。
ラウルに屋上に来てくれるよう手紙を書いた。
今日がその約束の日だ。
