度重なる『事故』が起こっても公演が中止されないのは、ムッシュウ・フィルマンがよく言うように「ゴシップは宣伝になる」からなのだろう。
中断はしたものの、イル・ムートは上演され、わたしは2度目の拍手喝采をもらった。
翌日はさすがに公演は中止にし、今後の予定も大幅に変わった。
イル・ムートは当面公演を行わないこととし、別の演目に変更することになった。
だがすでに売れてしまった分のチケットについてはそのまま記載されている日の公演用のチケットとして使用されることとなり、演目が変わったことに不満があるのならば払い戻す、ということになった。
メグからの情報では、払い戻しは何件かあったが、それを上回る数の購入の申し込みがあったそうだ。
そして。
わたしはあの日以来地下には行かなくなった。
楽屋も変えてもらい、必要があって舞台やレッスン室に行かなければいけない時はなるべく大勢の人の中に紛れるようにした。
(8):victor
