いつも聞こえるのは声だけ。
でもきっとお姿も声と同じように美しいに違いないわ。
絵画や彫刻の天使のように。
どんな方なのかしら。
歌や音楽でエンジェルの一番好きなものはなにかしら?
……音楽以外にもお好きなものはあるのかしら。
わたしのレッスンをしていないときには、何をしているのか、とか。
恋人はいるのか、とか……。
ううん。それはないわよね!だって天使は恋をしないはずですもの。
そうよ……恋なんて、しないはず……。
◇ ◇ ◆ ◇ ◇
『?恐れることはないよ』
エンジェルは優しい声で囁く。
わたしが黙り込んだのでプリマドンナを務めることを怖がっていると思っているみたい。
「ええ。……いいえ」
そうじゃないの、エンジェル。
プリマドンナのことよりも、わたしはあなたのことが知りたくて、知りたくて。
でも機嫌を損ねて二度と姿を現してくれなくなったらと思うと―それはわたしにとって、プリマドンナを務めることよりも恐ろしいことだ―
『?』
ああ、エンジェルの声!
頭の芯まで蕩けてしまいそう……
「エンジェル……お願いが……」
『言ってみたまえ。贈り物のお礼、というわけではないが、私にできることであれば叶えよう』
名前を聞く 我慢する 