突然ですが古典の時間です : おと姫
地の文や「出発」のあとがきにも書きましたがヒロインさんのお父さんはおと彦と呼ばれています。で、今回からヒロインさんもおと姫と呼ばれるようになりました。意味は書きましたのでここでは繰り返しませんが、ただ一つ、『なぜに女の子なのに「弟」で「おと」と呼ばせるのか。「乙」で充分ではないか』と思う向きの方がいらっしゃるのではないかと思いますのでそちらの方を解説いたします。や、難しい話ではないんですけどね。
まず、古語辞典をご用意ください。高校で使うようなもので充分です。ちなみに春日の持っているのは旺文社の全訳古語辞典です。
そこで「おと」という項目を探しましょう。
【弟・乙】というのが出てくるはずです。
「年若い、幼い、末、愛らしい」という接頭語としての意味と「(兄弟、姉妹のうちで)年下のもの。弟、または妹」という名詞としての意味がでてくるはずです。
また、「おとうと」という語も引いてみてください。漢字では【弟・妹】と出ていると思います。
「男女にかかわらず、年下のきょうだい」というような意味が載っていると思います。
小学館のでかい辞書を引いたらもう少し詳しい意味が載っていましたので書き写しますと『「おと」は「おと(劣)る」の「おと」と同根。年が下である意味。上代では「おと」のみで中古から「おとうと」が用いられるようになった。兄に対する弟、姉に対する妹をそれぞれ「おとうと」といったが、近世からは男に限られるようになった』
とあります。上代というのは奈良時代までのこと。中古は奈良〜鎌倉時代まで。近世は江戸時代のことだと思えばまず間違いはありません。
んじゃ「兄」とか「姉」とか「妹」はどうなのさー!な人にはさらに解説続けます。面倒な人は飛ばしてください。
まず「姉」は「あね」で「年上の女のきょうだい」という現代と同じ意味しか多分ないと思います。過分にして「姉」にそれ以外の意味がついたものは読んだことはないです。私が知らんだけかもしれませんが。
「兄」は「え」という場合と「せ」という場合があります。旺文社の辞書には「え」の方の意味は載っていませんでしたが小学館のほうにはちゃんとありました『(兄弟姉妹のうちで)年上の者』です。で、古事記とか読むと、やっぱり「弟」が男女関係なく年下のきょうだいを意味するように、こっちも男女かんけいなく「年上の兄弟」という意味で使われていたりするんですよね。「兄比売(えひめ)、弟比売(おとひめ)」という姉妹がでてきたりしてますし。
「せ」の方は旺文社にも載っています。「せ」で引くと【兄・夫・背】あたりの漢字が出てくるかと思いますが意味も見たまんま、『女性から、夫、愛人、兄、弟などを呼ぶ語。また、親しい男性を呼ぶ語』です。
つまり、ナセの「セ」がこの「せ」なんですよ。といってもこれは人称であって個人名ではないですから、意味だけ考えればレゴラスもナセと呼ばれる資格はあるんですけどね。
さてそれは置いといて、お持ちの辞書が対義語も併記されているものであれば「せ」の対義語で「妹(いも)」と出ているはずです。『男性から年齢の上下に関係なく妻、恋人、姉妹などを親しんで呼ぶ語』です。
英語で兄弟姉妹はbrother、sisterとだけ呼ぶのが一般的で、上下の区別をつけたりはあんまりしない、というのは結構知られているところだと思いますが、昔の日本では年上か年下かというほうが重要で性別はわりとどうでもいいという受け取り方もできますよね。ま、兄、弟の下に「ひこ」とか「ひめ」とかつけるからそれで男か女かわかるというのがあるかもしれませんが。
つまりはそういうことです。
突然ですが生物の時間です : 淡水魚と海水魚
またかよ!という方はお戻りください。今回はこんな話しかありません。
「海の魚は川には住めない」という喩えを出してみました。あまり上手いもんじゃないと思いましたがましなのが思いつかなくてね・・・
ここではサケとかウナギのように海と川を行き来するようなのや、汽水に住むような種類は思い浮かべないでほしいです。
海にしか住めないのと真水にしか住めないもの、を想定してください。
その大きな差は浸透圧調節がどうなっているか、です。
浸透圧というのはぶっちゃけていうと、濃度の違う液体があった場合、それらの液体が均一の濃度になろうとする現象、というか作用というか、そういうこと。
淡水魚も海水魚も体液とか血液の塩分濃度はさして変わりませんが、周囲の塩分濃度が違います。海水に比べれば薄いですし、真水に比べれば濃いです。
調節機能がないと、海水の魚には水分が抜けて塩分が入ってき、淡水の魚には水分がどんどん入ってきて塩分が抜けてくる、ということになってしまいます。
そうならないようにしているのが海水魚と淡水魚の違いです。
海と川を行き来できたりする種類は多分両方の機能があるとかなんでしょう。
それに、自然なんてなにがどう変化するかわからないのである程度は塩分濃度が濃くなったり薄くなったりしても適合できるんでしょうけどね。ほら、人間だって、高山で暮らしてる人たちとかは平地に住んでる人より肺活量が多くなってるとかいうじゃないですか。
つまり、そういうことです。
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