1910年8月16日(火) 一月ぶりにジュディから手紙が来た。 私こと『あしながおじさん』氏への手紙を書こうとしたら、本物のあしながおじさんが出現したそうだ。 それを見たときのジュディを想像すると、おかしくてたまらない。 きっとひどく困惑したような顔になっただろう。 おそらく今までのジュディだったら追い払うか叩き潰していただろうに、私にあの虫と同じ名前をつけてしまった ばかりに、彼女はもうあの足長虫を殺せなくなってしまったのだ。 こういうことを笑うのは不謹慎かもしれないけれど、彼女の葛藤(というほど大げさなものではないだろうけど) は少し、嬉しい。 おそらくそんなジュディならば、我が愛称、『あしながおじさん』と名づけられた子牛が6頭の中で一番大切にされ ているのではないだろうか 確かめるためには、私、ジャーヴィス・ペンデルトンがロック・ウィローに行くのが早道だとは思うが…。仕事が 詰まっているし、スミス氏とペンデルトン氏の関係を疑わせるのは賢いこととは言えないので、今回は見送ろう。 それから、私が子供の頃にあそこに残したままにした本やおもちゃをジュディは見つけたそうだ。 リジーはあれらを捨てていなかったのだな。 それにしても『追跡』か。懐かしい! あのいたずら書きは、いたずら書きにしか見えないだろうが、実はいたずら書きではなくて(我ながら何を書い ているんだろう…?)、子供の頃の私はその時に持っていたものを適当なところに置いてしまう癖があって、後に なって自分でもどこに置いたかわからなくなる、ということがしょっちゅうあったのだ。 だから誰かが見つけた時に私の部屋に持ってきてもらえるようにああしたのだ。 何も書かなければ、そのうち私が取りにくるだろうと思われるだろう? これは我ながら(子供ながら、かな?)名案だった。 あれ以降、あの本を見失うことはなかったのだから。 子供向けの冒険物語だけど、ジュディも気に入ってくれたようだ。 なんだか、私ももう一度読み返したくなってきたよ。 |
*本物のあしながおじさん…ガガンボ(英名がDaddy long legsであることは前述したとおり)便箋の上にいたというエピソードより。