1910年9月27日(火)
    二年生になったジュディから最初の手紙が届いた。

    大学にもすっかり馴染み、寛いでいるのが手紙からも伝わってくる。

    だが、なんというか、ジュディは「世界」が自分から隔てられているように書いてくることがあるのだが、それが

   彼女だけではなく孤児がすべからく当たり前に感じていることなのだとしたら、我々評議員が抱える問題は大きい

   と認識せざるを得ない。

    人は、生まれによって幸福になるのではなく、幸福になるべく生きるものがそれを手にするのだと信じている。

    だがそう考える私は甘いのだろうか。

    自分の考えを見つめなおす必要があるかもしれない。

    しかし、いつかは彼女の(そして孤児たちの)孤独感を払拭できる方法が見つかるかもしれない。 
    どうしてかな、ジュディの手紙を読んでいると、そう思えてくるんだ。



    と、しんみりしたところで私もジュディ同様の疑問は持ったことを書き記しておこう。

    ジュディは今度は三人部屋で、同室の相手はジュリアとマクブライド嬢という、一年生の時の同じ顔合わせだった。

    しかし一年生の時とは違って、今度は同室の相手は自由に決められる。

    ジュリアは姉とそっくりで、とにかく何でも一流でないと気がすまない子だ。

    マクブライド嬢はそういう意味ではジュリアのお気に召す相手ではないはずだが(マクブライド家はせいぜいが

   アッパー・ミドルだ)一体どういう風の吹き回しだろう。

    生まれで人を決め付けることの馬鹿馬鹿しさに気付いたのなら、嬉しいのだが。

   

    それにしても、こういう、つい返事を書きたくなってしまう手紙を書くなんて、ジュディという子は本当に…。

    これが計算づくだとしたら大したものだが、そうでないのだから始末に終えない。

    自分はジャーヴィス・ペンデルトンであって、ジョン・スミスとは別の人物であると言い聞かせないといけないほど

   なのだ。

    これがなかなか厳しい。

    特にジュディは話しかけているように手紙を書いてくるので、ついうっかり返事をしようと便箋に手が伸びそうに

   なるのだ。

    励ましたくなるし、意見をしたくもなるし、他愛ない話もたくさんしたい。

    一月に一度だけだなんて、少なすぎる。 

    とてもじゃないが、足りない。

    しかしこれは私が決めた事だ。それを私の事情で変えるなんてしたくはない。

    また時間を作ってペンデルトン氏として会いに行こう。そうすれば気も晴れるだろう。



    おやすみ、ジュディ。

    私も君の両親がフランスの修道院に投げ込まないで良かったと思っているよ。














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