1911年4月9日(日)
    ニューヨーク旅行の感想の書かれた手紙が届いた。

    ジュディは舞台にずいぶん感激したようで(いや、わかっていたが。幕が降りた後も彼女はずっと座りこんだまま

   で、ようやく劇場から出た後も頬を真っ赤にさせていたのだから)作家よりも女優になりたいとまで書いてきた。

    ジュディは真っ白なキャンバスみたいな子で、その時々に読んだり観たりしたものに感化されやすいところがある

   ことに私は気付いている。

    今回ももう少し経てば落ち着いて、やはり自分が女優より作家に向いているとわかってくれるだろう。

   

    それから、別れ際に三人に花束を渡したのだが、ジュディは帽子が欲しかったのか…。

    私はジュディの後見人なのだから、そうしても構わないのだが、その事実を伏せてしまうとずいぶんと制限され
   てしまうのだなあ。

    しかしジョン・スミスではないジャーヴィス・ペンデルトンに贈れるものは、せいぜい花か菓子か本くらいだ。

    帽子や靴やドレスは、ジャーヴィスでは与えられない。

    仕方が無い。どうせなら二人で帽子屋に行って選びたいところだけど、ここはお小遣いを送ることにして、選ぶの

   はジュディに任せることにしよう。

    

    ああ、それにしてもニューヨークでは招待してもやはりゆっくりできないものだな。

    夏休みにジュディはまたロック・ウィローに行く事になるだろうから、私もそこでしばらく過ごしてみるか。



   



















  
























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