1911年4月13日(木)
    昨日の件で、さらにジュディから手紙が届いた。

    昨日の手紙が礼を失していたとわびてきたが、そんなことは私は気にしていなかった。

    たしかにそっけない書き方をしているとは思ったが。

    ただ、私の、というより、ジョン・スミス氏の気持ちは届いているようであるし、スミス氏とジュディが本当の親戚

   ではない以上、彼女としては必要以上の金銭を受け取りたくないのだという決意は受け入れるしかあるまい。

    たとえ手紙にスミス氏が彼女の身内であるかのように書かれていたとしても、それは彼女の「ふり」。ジュディの

    空想遊びなのだから。
    それならそれでも構わない。

    だが、私としては彼女に要返済の奨学金を貸したつもりはまったくないし、ジュディも一応そのことはわかってい
   るとは思う。なのに彼女は大学生活に私が支払った分を返済するつもりでいるようなのだ。 
    どうして今更そのようなことを書いてくるのだろう。

    ジュディの大学生活の費用は返済不要のものであると、伝えているはずなのに。

    しかし彼女はそれを「負債」と書いてきた。

    「負債」だぞ!?「奨学金」より悪い。

    これではまるで、私が金で彼女の人生を買ったようではないか!

    確かに、作家になるように命じたのは私ではあるが、だったら他にどうしたらいいというのだ。

    大学にはゆかず、孤児院を出た後、農家の手伝いや女中や、他の取り立てて技術も才能も必要のない職に

   ついたほうが良かったとでも?

    

    わかっている。

    ジュディはそんなことを思っちゃいない。

    ただ、私の期待に答え、そのために最大限努力をしているに過ぎない。さらには自分の将来も見据えて…。

    だから、私がするべきことは、この幸薄い雛にエサの取り方と空の飛び方を教える手助けをすることだけなの

   だ。だが、それすら私の手ではなく、大学教授や彼女の友人たち、それに本人の努力で補われており、私はそ

   の成果を月に一度の手紙だけで満足しなければならないのだ。

   それは当初からの約束であるのだが、これほどやるせない思いに取り付かれるのならば、やるのではなかった

   とつくづく思った。





  






















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