1913年10月16日(木)
     前回と、前々回とその前の日記を読み返すと、そこには不幸な私がいて、得られぬ愛情に苦しんでいた。

    だけど、今は違う。こうして文字を綴っている私は、幸福で満ち足りたジャーヴィスだ。

    

     昨日、ジュディが我が家を訪ねてきた。それは、私がここに来るように手紙を書いたのだから、当然なの

    だけど。 

     もっと元気になってジュディと会えると思ったのに、いつまで経っても熱が引かず、身体もだるいままで、

   結局当日になってようやく、医者から短時間なら面会をしても良いという許可がでたのだ。

     なんだか格好悪いな。

     それから、ジュディが来たという知らせを聞いて、君が書斎へ来るまでの間、どれだけドキドキしたか。
     だって、本当は君はすべて気付いていて、正体を明かそうとしない私をこらしめるためにあんなことをした

    のじゃないかって、その時はそう思ってしまったんだよ。

     だけど、違った。君は本当に全然気がついていなかったんだ。

     余程君の想像の中のスミス氏は、私と似ていなかったのだろうね。

     ああ、それにしてもあの時の面会時間が三十分だけだったなんて信じられない。

     一日中話していたのじゃないかと思うくらい、色々なことがあったね。

     君はなかなか驚きから醒めてくれなくて、ずうっとぼうっとしていたけれど。私も嬉しくてぼうっとなっていたから

    お互いさまかな?

     そうだ、色々あってすっかり忘れていた。作家デビュー、おめでとう。

     学費の返済なんてしなくて良いと前から伝えてあるし―そのことでも大喧嘩をしたなぁ―今だって受け取るつも

    りなんてないのだけど、それで君の気がすむのなら、そうすればいい。

     これから私たちは夫婦になるのだから、どちらがどちらに借りがあるなんてことはなくなるんだから。

     そう、言葉はその場で消える。耳に伝わり、一瞬後には思い出としてしか残らない。

     だから、ここに目に見える形で残しておこう。

     プロポーズを受けてくれてありがとう。君を愛している、ジュディ。

     

     





  
























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