まあ、こういうことになるだろうなと密かに思っていたのだが、だからといってそれが現実になったところで

    嬉しくもなんともない。

     …親族連中のうるさいことといったら、下手くそなオーケストラの真ん中に放り込まれた時以上だろう。

     下手くそなオーケストラの真ん中に放り込まれたことなどないが、今の私にはそっちの方がマシだと思える。

     

     病気から回復した後、いくらなんでも黙ったままというわけにはいかないので、姉さん夫婦に結婚をすると

    報告をしたのだ。

     姉は私がなかなか結婚をしようとしないので、このままではペンデルトン家の直系が途絶えるのではないか

    心配していたので、この報告は最初、彼女をとても喜ばせた。結婚相手がジュディだということについては、少
    し年が離れているけれども悪くはない、と言っていたのだ。

     姉さんたちはジュディに会ったことがあるのだ。その時、彼女は天涯孤独の身の上だが、百万長者の後見人

   がついているという風に紹介されていたことを、私は覚えている。ジュリアは本当のことを知らなかったので、両親

   にそう説明せざるを得なかっただけなのだが、これが結果的に裏目に出てしまった。

    ジュディの後見人というのは私だということ、そして彼女が孤児院で育ったということを告げると卒倒してしまった

   のだ。そして猛烈に反対し始めた。 

    姉さんたちの言い分は、こちらの予想をまったく裏切らないものだったので、私としては非常に気が楽だった。

    つまり、これまでジュディのことを、天涯孤独かもしれないが、結婚するとなれば後見人が持参金をつけてくれるの

   だろうし、その後見人が亡くなれば財産を相続するだろうと考えていたのだ。身分はなくても財産家ならば、ペンデ

   ルトン家の長の妻としてそう悪い相手ではないと。

    だが、実際のジュディには何もない。姉たちの基準で考えれば、だが。

    私はジュディが駆け出しとはいえ作家なのだと伝えたのだが、全然耳に入らなかったようだ。

    それからというもの、滅多に遭わない『親戚』が突如として押しかけてくるし、電報も山のように届くようになった。

    その数ときたら、私が毎年親族からもらうクリスマス・カードより多いくらいだ。自分にこれほどの数の親戚がいた

   ということを今回の件で初めて知ったよ。

    彼らの言い分は大同小異で、つまり、ジュディはペンデルトン家の財産を狙っている性悪な女で、私はそれにま

   んまと騙されているのだということだ。

    そのことに対する私の反論は一つ。鼻で笑うこと、だ。

    ろくにあったことのない連中が、私の結婚に対して意見をできるなどと、思い上がるのも甚だしい。

    それに、私は変わり者かもしれないが、世慣れていないわけではないのだ。

    大体ジュディが財産狙いだなんて、的外れな批判もよいところだ。もしもそうなら、私たちは奨学金のことであれ

   ほど揉めることなどなかったはずなのだ。まあ、そんなこと、彼らに言ったところで関心を払うなどと思ってもいな

   いが。

    それにしても、親族の対応に時間を費やされるだろうとは思っていたけれど、ここまでとは…。病も癒えて、よう

   やく婚約期間を楽しめるのだと思っていたのに、ろくにジュディに会いに行く時間も取れないくらいだ。 

    私が会いに行くにしろ、彼女がこちらへ来るにしろ、ニューヨークとロック・ウィローは簡単にデートをするために

   行き来できるような距離ではない。

    何度週末が親族たちの手によって潰されたことか…。



                            ああ、また誰かが来たみたいだ。




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* ジャーヴィスがペンデルトン家の直系かどうかはわからないのですが、話の都合上そういうことにしています…。
* ジャーヴィスとジュディの結婚話がどのように進んだのか、原作からだとさっぱりわからないため、 日付は省略させていただきます。