いる。

     これが健全な家庭といえるだろうか?いや、いえまい!

     私は、ジュディの目を覚ますべく、少々手荒でも確実に効果のある方法を取った。

     すなわち、彼女が席を外したすきに、原稿用紙を隠したのだ。

     彼女には容易に見つけられない場所、つまり高いところに。

     窓を開けて、枠に乗り、屋根の上に置いておいた。風で飛ばされないように重石を置くのも忘れていない。

     あとは彼女の反省を待つだけ。そうしたらすぐ返してあげよう。

    


     翌日記す。

     原稿用紙を隠したのは私ではないかとジュディは疑っている。

     確かにその通りだけれど、いくら私の部屋を探したって出てきやしないのだからと、心ゆくまで探させてあげた。

     創作の時間がなくなったので、昼食はレストランでとろうと誘ったのだが、原稿を返してくれない限り、レストラン

    も散歩も行かないと断られた。

     こんな対応をされるとは思ってもみなかった。腹が立ったので、当分返さないことにする。



     



     翌日記す

     こんなことになるとは思ってもみなかったのだ。

     私はただ、ジュディが少し困ればいいと思っただけで、原稿そのものを駄目にするつもりなど、少しもなかった

    んだ。もし、そんなことをする権利を持つものがいるとしたら、それは作者のジュディだけだということを、ちゃんと

    わかっているのだから!

     だが、時間は元に戻らない。

     まさか…。まさか…。夜のうちに雨が降るだなんて…!
     ここのところ、晴天続きだったので、そのような可能性を少しも考えていなかった!

     この、水を吸ってぶよぶよになり、インクのにじんだ代物を「君の原稿だよ」と言って返せるものか!

     どれだけ怒ることだろう。そして、どれほどがっかりすることだろう。

     書き直せるものならば書き直してやりたいが、ここまで滲んでいると、何と書いてあったのかはさっぱり読み

    取ることができないのだ。

     どんな顔をしてジュディに会えば良いのかわからない。雨が降ったのは私のせいではないけれど、雨が降っ

    たら濡れてしまうところに置いたのは私に違いないのだ。

     どうやって償ったら…。

     思いついた。今書いているこの日記を破棄する、というのはどうだろうか。他に私が書いているものといったら

    業務に関係するものや手紙くらいなので、個人的な目的のために書いているのはこの日記くらいしかないのだ。

     …なんだかそれが一番良いような気がしてきた。よし、これを彼女の目の前で燃やしてしまおう。そしてこの、

     駄目になってしまった原稿を返して、許しを請うのだ。それ以外、この夫婦の危機を回避する方法はなさそう

    だから。

    そういうことだから、ちゃんと口でも言うつもりだけど、ここにも書いておく。ジュディ、済まなかった。




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えー…。
リクは嫉妬したジャーヴィス、というものなんですが…。
在学中の嫉妬はもうこれ以上書けないというほど書いてしまいましたし、
婚約中〜結婚後だと、ジャーヴィスが嫉妬するような相手がいるとそれは問題だろ!?
と思いまして…。
ジャーヴィスにもどうすることもできない、想像上の人びと(というかジュディの創作熱)
に嫉妬(というかイライラ?)させることにしました。

…海賊話を持ってきたことなど、明らかに暴走していることはわかっています。
が…どうしても書きたかったんですー!!
や、アメリカ国内とかだと、ジュディにしばらく放置されてても、ジャーヴィスも勝手がわかってる
でしょうからそれなりに暇つぶしもできるでしょうし、友人知人もいるでしょうし…。
でも外国(それもあんまり大きくないところ)だと、気晴らしも友人知人も限られてくるだろうからな、と。
ま、一番の原因は、あしなが及び続あしながでジュディたちが確実に行った実在の場所にジャマイカがあって、
で、ジャマイカのことを調べたら、昔の首都は「ポート・ロイヤル」だと知ったせいです…


あ、それと、ジュディはジャーヴィスに下手にでられると何でもすぐ許してしまいそうな気がしますので、
結局これも許してもらえたと思います。(そして日記を燃やすこともなかったのではないかと…。あれ?ジャーヴィス最初からそれ狙ってる…?