ここ数日、ジュディの様子がおかしかった。

     ふとした折りに難しい顔になっていたり、思わしげにため息をついていたり。

     何か悩み事か、身体の調子でも悪いのかと心配した私に、ようやく理由を話してくれた。

     彼女は、自分は大学で生理学もしっかり学んだのだが、と前置きした。

     もちろん、私はそのことを知っている。彼女が手紙に書いてきたことがあったからだ。

     それが一体どう話につながるのかと身構えていたら、この判断はその時の知識を元に下したもので、実際に

    考えどおりのことになっているのかはわからないが、と念入りに付け加えた。

     それで、私はすっかりジュディは病気で、入院か療養をしなければならないのかと目の前が真っ暗になる思い

    がしたのだった。

     しかし、そうではなかった。

     彼女は、自分はどうやら妊娠したらしいと感じている、と言った。 
     初め私は、ニンシンとは、どんな病気だっただろうか、と馬鹿みたいなことを考えてしまった。

     そしてすぐに、大声で叫んでしまった。

     妊娠といったら、子供ができたということじゃないか。病気であるものか!

     彼女の言い方が紛らわしいというのもあるが、私の早とちりぶりも、今となると笑えて来る。

     飛び上がるほど驚く、という表現があるが、私もあの時には本当に飛び上がっていたかもしれない。

     それくらい衝撃が大きかったのだ。



     これが昨夜の話。

     そして今日は朝食が終わると早々にかかり付けの主治医に連絡を入れて、ジュディが本当に妊娠しているか

    どうかを調べてもらった。

     結果はその日のうちに出たので、記念すべき成果を記そう。

     出産予定は来年の二月そうだ。



     しかし、正直言って妊娠したといっても私自身現実感は乏しい―驚きはしたが―。

     なにしろ、ジュディの見た目はまったく変わっていないので、本当にこれから腹が膨れてくるのだろうかと思って

    しまうのだ。もちろん、私たちは正式な夫婦なのだし、私もジュディも至極健康なのだから、子供ができるのは

    当然なのだろうが……。

     しかし、ここで私がうろたえてはいけない。これから大変な思いをするのはジュディなのだから、できる限りの

    手助けをしなければ。とりあえず、妊娠初期は流産しやすいというので、しばらくドライブをするのは控える事に

    した。

     街中の舗装されている道路ならばともかく、ちょっと郊外に出るともう凸凹した道になる。そういうところを跳ね

    ながら突き進むのが私は好きだが、ジュディの身体にはよくないだろう。

     他にも、気をつけなければいけないことを調べなくては。














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