眠ろうとベッドに横になってまどろみかけた時に、ふいに思いついたことがあって、それに夢中になるあまり

    すっかり眠気が吹き飛んでしまうことが、たまにある。

     昨夜もそうだった。

     寝しなにジュディと、生まれてくる子は男の子だろうか女の子だろうか、自分だったらどっちが言いか、などと

    言う話をしたのが原因だと思うが、瞼を閉じた後、ふいに私はとても大切なことをし忘れたのを思い出したのだ。

     子供が生まれるのだから子供部屋を用意しなければ。

     子供用の家具も必要だし、熟練のナースも探さなければ。

     それに、玩具も用意したい。私が小さいときにはゆらゆらと揺れる木馬が好きだったが、女の子でも乗るもの

    なのだろうか。それとも生まれるまで待った方がいいだろうか。

     代父母になってくれる人も考えておかないと。そうそう、代父母がいて洗礼用ドレスがなかったら大変だ。これも

    用意しないと。

     他にはなにがあるだろうか。

     と次から次へとやらなければいけないことが見つかったので、矢も立てもたまらずジュディを揺すぶって、子供

    に必要なことのあれこれをまくし立てたのだ。

     彼女はとうに眠っていたようで、目が半分塞がった状態だった。しかし彼女は私の話を聞いてくれて、そして

    こう言った。

     「子供部屋は必要ね。ナースも、代父母も洗礼用ドレスも。でもその前に、わたしの妊婦服が必要になるだろ

    うし、木馬より先に、オムツや産着や肌着や靴下や帽子や、涎掛けなんかがいるようになるはずだわ」と。

     そして、

    「そんなに急いだって、お腹の子は早く出てきてくれるわけじゃないわ。さあ、わかったらわたしの健康のために

    も眠らせてちょうだい」

     と告げて、彼女は目を閉じた。

     一人取り残された私は、ぽかんとしながらも、ようやく冷静になれた。

     まあ、確かに夜の夜中に考えなければならないことでもないな、と。

     ついでながら、女性にとって子供ができるということは、男が思うより現実的なのだな、とも思った。

     奇跡の技、神秘の力、とまでは言わないものの、自分以外の存在が自分の中にいるというのを、男はどうし

    たって感じることはできないのだ。

     それで非常に大事のように思ってしまったが、女性にとっては起こって当然のことで、腹の据わり方が全然

    違う。私にとって子供が生まれるというのは、子供部屋や洗礼用ドレスのような、形式的なことで。しかしジュディ

    にとっては、オムツや産着などの日常的なことで。

     ある意味、子供の世話には慣れている彼女だからこうなのか。それとも寝ているところをたたき起こしたので

    機嫌が悪かったのか。

     まあ、ともかく、先走りすぎたのは否めない。

     それから、オムツの用意もちゃんとしておこう。いや、ジュディがそのあたりはしっかり用意しそうだが。

     しかし、言われるまで気付かなかったが、一番必要だな、オムツは。












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新生児に着せるものですが、↑では洗礼用「ドレス」と書いていまして、洗礼の時に着せるのが
ドレスなら、産着もドレスタイプだろうことが想像つくと思われますが、別にジャーヴィスは最初から女の子が生まれる
と思っているとか、女の子が欲しいと思っていたとかではなくて、多分この時代はまだ子供服は男女問わずドレスタイプ
を着ていたのではないかと思ったためです。
19世紀のヨーロッパは、幼児くらいまで男の子でもワンピースみたいな形の(あ、スモックって言えばいいのかな?)
服を着ていたみたいです。
産着も同様。
それならアメリカでも同じだろう、と。
ロンパースみたいなのが登場したのがいつ頃かはよくわかりませんが、形状からすると結構新しいのではないかな。