月日が経つのは早いものだ。

     季節はもう冬。そしてジュディのお腹も目立つようになった。

     経過は順調なのだろう。体調を崩したこともあるが、あれは妊婦ならば大抵は経験するというつわりだったの

    だから。そのつわりの中でも重い軽いがあるようだが、どちらかというと多分軽い方だったのだろう。男の私には

    本当にそれが軽いものだったのかどうかはわかりかねるのだが……。とりあえず食事が取れなくなるほどでは

    なかったのでそう考えた次第である。

     今では安定しており、外へ食事に行ったり観劇をすることも普通に行っている。

     私はニューヨークは嫌いではないが、長い間留まっていると風景には飽きるし、喧騒が耳障りになって遠くへ

    離れたいという欲求が強くなる。それでつわりが治まった頃、どこか静かなところに二人で行こうかとも思った

    のだが、友人の奥方―もちろん出産経験のある女性だ―に、気晴らしができないと出産前の憂鬱にかかる女性
    もいるので、まずはジュディの意見を聞いてみるべきだろうと言われたのだ。

     そういうものなのかと助言通り、ジュディにどうしたいか訪ねてみたのだが、気晴らしはともかく、やり方に慣れた

    ドクターが近くにいる方が心強いということだったので、このまま自宅で出産を待つことにした。 

     そして出産後に彼女の体調が戻ったら、どこか暖かいところにしばらく骨休みをしに行こうと思っている。



     そうそう。折りしも世間は12月。クリスマス・シーズンに入った。

     これから大仕事を行うジュディのために、今年のプレゼントはぜひとも奮発したい。

     はじめは、ドレスにするか宝石にするか、それともヨットとか別荘にしようかとも思ったが、もっと良いものを思い

    ついたのだ。

     私は半年前からジョン・グリアの評議委員長の役職にある。

     そして当該孤児院の改革のために何をするべきかを判断するため、現状を再調査したのだ。当事者の一人で

    あるジュディの記憶を軽んじるわけではないが、彼女があの場所を離れてから五年以上経っているし、その間に

    変わったこと―良い方向へでも、悪い方向へでも―がないとも限らないからだ。

     その結果は散々なものだった。十年が一日の如く、何も変わってはいない。

     ということは、事は急を要するということである。

     機は熟した。今が実行に移すときなのだ。

     これを私がしてもよいのだが、せっかくなのでジュディに一任しようかと思う。

     彼女なら、これまで学んだことを生かせるだろうし、新院長も彼女の人脈の中から適切な人物が選べるだろう。

  
























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