あらまあ、夢中になって手紙を書いていたので、すっかり話が別の方向に行ってしまいましたね。
   とにかく、私が申し上げたいのは、ジャーヴィスは焼きもちを焼く前に、焼きもちを焼くに値する

  ことなのかどうか、一度確認をするべきだと思いますの。

   私、思うのですけど、ジャーヴィスは恋愛方面ではかなり鈍感な方ですわ。

   鈍いにも関わらず、余計な勘繰りをするから、今度のようなことが起きたのです。

   これは、怒りの余りにペンが滑ったわけではありません。私はそれを物理的に証明することができる

  と思います。

   証明といっても、簡単なことですわ。

   ジャーヴィスは私からの手紙をたくさん所有しているのですから、それに何回ご自分の名前が出てき

  たのか、それから何回ジミー・マクブライドの名前が出てきたのか、数えてみれば良いのです。

   私自身は手紙に何と書いたか、一語一句を覚えているわけではないですが、きっと、ジャーヴィス

  の名前の方が多いことでしょう。

   人はより関心の高いものに目や耳や、意識が向かうといいます。

   だったら、私の関心が、ジャーヴィスとジミーと、どちらによりあったかは、これでお分かりになる

  のではないでしょうか?

   もちろん、事の渦中にいるときには、客観的に物事を見つめることは難しいといいますから、あの頃

  それにジャーヴィスが気付かなくても仕方がないでしょうが、その割にはあの方、私に何一つ確信めい

  たことを告げも匂わせもしないくせに―『おじさま』がなさらなかったのは仕方がないにしても、『ジャ

  ーヴィス』とは何度も会いましたし、手紙もくださったのにね!―勝手に悩んで勝手に邪推して、そし

  てどうにもならないとなると、彼ととてもお親しい、そして私にとってはどうあっても逆らうことのでき

  ない、あしながおじ様のお力を使うこと、度々でした。

   違う、などとおっしゃらないでくださいね。

   私は、それも証明することができるのですから。 
   私はジャーヴィスの日記を持っているのです。あしながおじ様のペンデルトンさん、あなたが私にくだ

  さった、あの日記ですわ。

   私はあれを読んで、おじ様が私の思っていた以上に私のことを気にかけていてくださったことに感動
  しましたが、それでも在学中に何度か感じたおじ様の理不尽さは(夏休みにマクブライド・キャンプ

  に行ってはいけないと命じたことや奨学金の問題などです)、やはり深いお考えがあってのことではな

  かったのだと、少々失望してしまったものですわ。

   頑固な年長者の、彼なりの指導ではなく、ただの男性の独占欲だったのですね。

   それでも私はあなたが好きですもの。もう過去のことですし、怒ってなんかいません。

   ただ、過去に学ぶ、ということをしても良いと思いません?

   良かったら日記をお貸ししますわ。その前に、一部を朗読してさしあげますね。

   そうしたらきっと、過去の恥ずかしい手紙を口に出されることがどれだけ穴があったら入りたいという

  思いにかられるのかも、ご理解いただけると思います。

   今度の訪問には、入り口で締め出すなんて真似はいたしません。

   あなたの訪れをお待ちしています。

  

                                     許しと愛情を込めて 

                                        ジュディ・アボット


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最後の最後で禁じ手を使ってしまった……。
まあ、ある意味いい感じにオチがついたのでいいかとも思う(笑)