++ 女性には切実な問題 ++


私事で恐縮ですが、春日はオリジナルキャラによる夢小説を書いています。ちなみにこの考察ページでは二次創作ネタについては直接触れないようにしていたのですが(嫌いな人もいるだろうし)、今回ばかりはご勘弁願いたい。
というのも、今回のネタは「現代っ子な『彼女』が19世紀のフランスで一番不便だと思うことはなんだろう?」ということをつらつら考えていたときに発生したものだからです。いい年の女としてはもっと別なこと考えたほうが良いんじゃないかという気は一応していますが、まあいいや。(-_-;)

不便だと感じることは色々考えられます。
衣で言えばコルセットがきつそうだとか、服の総重量が重そうだとか。
食で言えばこれは現代でもありそうですが、日本食が食べたいけど食べられないとか。
住で言えば、エリックん家は地下なので日光が入らないので鬱だ、とか。(ちなみに原作やケイ版のエリックの家の水事情はこの時代のパリのレベルで言えば非常に良いと言えると思います。上下水道、風呂、(多分)水洗トイレ完備っぽいですから。この当時のパリの水事情はロンドンに比べると非常に遅れていて、19世紀末においても家庭内に上水道がないこともありました。しかし下水道はもっとありませんでした。当然浴室がない家の方が多く、トイレもアパート一つにつき一個しかないような共同トイレか、「おまる」を使っていたそうです。)

が、こういう家主・エリックに相談できる類の不便さならまだマシでしょう。
言うこともできない、何が何でも言わなくちゃいけないのだとしたら大きな葛藤が起こる…。そういうの、何かないかなとつらつら、つらつら…。
していたら。

あった。

「生理の手当ての仕方」

二次創作にそこまで考えなくてもいいじゃんと言う声が聞こえてくるような気がする。
私もそう思いました。
が、まあ先に進みましょう。





生理用品、何を使っていたか?

生理用品にはナプキンとタンポンの2種類があります。
19世紀のフランス(及びヨーロッパ)ではどっちが主流だったのか。
すでに商品として売ってるのなら、『彼女』も助かるだろうけど、もし売ってなかったら、どうすりゃいいんだ?
ということで、まずは商品として発売された生理用品はナプキンか、タンポンか。そして発売されたのはいつか?ということを『アンネナプキンの社会史』に答えてもらいましょう。
1896年、アメリカのジョンソン・アンド・ジョンソン社から売り出された「リスターズ・タオル」というものが最初だ、とのことです。
ガーゼで綿を包み、褌(ふんどし)のように吊るして使うタイプのナプキンだったそうです。
しかし、1896年では間に合いませんね・・・。(日常生活シリーズは1878年の設定です)

となると、『彼女』さんは自分で何とかしなきゃならない。
前掲書で著者は「リスターズ・タオル」は市販を目的に特別に工夫したものではなく、当時の多くの女性が使っていたものをそのまま製品化したものだったのだろうと推察しています。
てことは『彼女』さんはこれを自分で作らなきゃならないみたいです。
残念ながらこれの絵や写真は同書には載っておらず、ネット検索でも見つけられなかったので実際にはどんな形をしていたのか不明ですが、褌状とあるからには紐がついてて腰のところで結ぶとかそういうのなのかなぁ。
現在、ナプキンを使うときには生理用ショーツを使用しますが、この頃はまだ下半身にぴったりしたショーツというものは存在していませんでしたから、ショーツに当てて使う、というのはできませんでしたし…。(ショーツのようなもの、としてはドロワーズがありますが、あれは股上がかなり長い上、開いてるのでナプキンを当てるのは無理です)
また、これも春日は未見なのですが「エンジェル・アット・マイ・テーブル」(ジェーン・カンピオン監督)という女流作家ジャネット・フライムの半生を描いた映画があるのですが、その中で主人公が初潮を迎える場面があり(時代としては1935年頃)、その時の手当ての仕方は布おむつのようにぼろ布を10センチくらいの幅に折り、褌状に当てて下着のシャツの前後を安全ピンで止めるというもの。(参考・前掲書)
あるいはこういうやり方なのかもしれませんね。安全ピンは19世紀中頃に発明されたので、『彼女』さんも入手可能。
やー。良かった良かった。
しかし、多い日や寝てるときに漏れないのかなー。こういうの。

ちなみに現在でも布ナプキンを使っている方々がいらっしゃいます。
春日には未知の世界なのですが・・・。
参考→




ついでにタンポンの話


ついでですので、タンポンの話もしましょう。
生理用品として歴史が古いのはタンポンの方らしいです。
紀元前3000年頃のエジプトの女性のミイラの膣内からタンポンが発見されています。タンポンは膣内に詰め物をするという形態上、ショーツ状のものとセットで使わなければならないナプキンより手当てが楽なのでしょう。
出てくるんなら栓をしてしまえということですね。
素材としてはエジプトではパピルスなどが使われていた模様。
また国や時代は変わっても、タンポンとして使用するものはおおよそどこでも手近にあるもので植物性のものならなんでも詰めていたようで、麻や木の皮、草、海綿などが使われていたそうです。
また、商品としてのタンポンは、1933年にアメリカのタンパックス社からアプリケーター式のものが発売されたのが最初です。
歴史は古いが商品としてはナプキンの後なのが意外といえば意外ですが、工業製品というものが産業革命とともに発展したわけですから、当然といえば当然なのかもしれない。
膣に詰め物をするのは昔からのありふれた方法ではあっても、それを誰でも買える商品として認めるには抵抗があったということなのだと思われます。前掲書によるとタンパックス社のタンポンが発売された当時、キリスト教会からタンポンは避妊や自慰、処女喪失に通じるということで批判されたということです。





ついでだ。これもやってしまおう 〜コンドーム〜


せ、生理用品じゃありませんが、前掲書に書いてましたので、せっかくですから紹介します。
コンドームは、17世紀の半ばのイギリスの医師コントンがチャールズ2世の愛妾の依頼を受けて、避妊目的のために考案したのが最初なそうな。
初めはリネンや絹が用いられ、ヤギの膀胱や豚の腸などの素材も使われましたが、現在のようなコンドームになるのは1870年に売り出されたラテックス製のものからだそうです。
歴史は浅いが売られたのはナプキンよりも早いってーのがなんとも。
ちなみに日本では徳川十代将軍家治の治世紀、1760年頃に両国の薬問屋で売り出されたのが最初らしい。素材は象牙や水牛や練り絹、と書いてあるのですが・・・練り絹はともかく、象牙って…堅いんじゃ…。水牛ってのは角か?
とりあえず、オペラ座の時代にはすでにあったことはわかった。>コンドーム
が、裏を書く予定はないので何の役にも立たないのが悔しいところ。




オマケを読む?   戻ります



参考文献:アンネナプキンの社会史