1909年10月12日(火)
    ジルーシャより手紙が届く。

    今日のは前回よりもより詳しく学んだことが書かれていた。

    ラテン語、フランス語、幾何、国語、生理学…。各教科、順調のようである。

    もっとも、彼女は頭は悪くないので私はあまり心配していなかったが。

    しかし、意外なところに落とし穴があったというべきか。

    教科についてはともかく、普通の家庭で育った娘なら、当然知っているべき事柄を知らないというのだ。

    そのため、ずいぶん苦労しているようだ。

    なるほど。そこまでは思い至らなかった。しかし、こればかりは私も手助けはしてやれない。

    ジルーシャは賢明にも、知らないことに出くわしたら、そのときは黙っていて、あとで百科辞典で調べるという対
    策をとるようにしている。大変だろうが、これらのことも、人生の糧となるだろう。

    しかしこちらが心配するほどには、ジルーシャはめげてはいないようなので、安心した。

    何しろ私の周りにいる若い女といったら社交界でのつきあいがほとんどで、美しいが頭が空っぽな女か、貞淑と

    か優しいという言葉の意味を履き違えているメソメソ女しかいないものだから、ジルーシャもそういう女の子だった

    らどうしようかと内心思っていたのだ。

    さて、小遣いのことだが、まずは部屋の模様替えのためにいくつか家具を買ったそうだ。

    窓が高いからと化粧ダンスの鏡を外して椅子代わりにしたとある。あの子は座り心地は申し分なしと書いてきて

    いるが…しかし、化粧ダンスでは背もたれがないのではないか?長時間座るには不向きな気がする。

    それから、ジルーシャは同室の一年生、サリー・マクブライドとはずいぶん仲良くなっているが、我が姪ジュリア

   とはさっぱりのようである。…やはりそうなったか。まあ、仕方がないか。



















  
























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