1909年11月17日(水)
    ジュディより手紙が届く。

    今まで頻繁に届いていたので、そう久し振りだというわけでもないのに、ずいぶん長い間こなかったように思え

    た。

    今回は服のことが長々と書かれてあった。
    大学に孤児院の制服で通うわけにはいかないだろうと、ドレスを作らせたのだが、それに大そう感激していた。 
    費用を出したのは私だが、選んだのは視察官のミス・プリッチャードである。

    なにしろ、顔もわからない相手のものを選ぶのは難しいのだ。まさかドレスのためにジュディに会うわけにもゆく

    まい。それでは何のためにこんな形で援助をすると決めたのかわからなくなる。

    ところで、ジュディは少し思い違いをしている。
    彼女は自分がドレスのことで喜んでいる事で、女の子の教育は金の浪費だと私が思うかもしれないと書いてい

    るのだが、そのようなことは初めから承知していることであるし、あの大学に通う娘になら6枚だけでは足りない

    だろうと思っている。高価である必要はないが、時と場所に応じた衣服を用意し、身につけることは礼儀であろう。

    もっとも、誰にでもできることではないということは、わかってはいるのだが……。

    誰もが皆豊かな暮らしをしているわけではないのだから。





    と、まあ、堅苦しい内容はここまでにしよう。

    ジュディは今までにも私の意見を求めるようなことを書いてきたことはあるのだが、返事がもらえると思ってはい

    いないはずである。そういう約束で援助をしているのだから。

    しかし、とうとう彼女は私に返事をしてほしいということを書き記してきた。

    これで私の本名だとか仕事だとかを聞きたいと言うのであれば、さすがに少しは腹が立ったかもしれない。

    事実、私はそのことを問われるのではないかと、読み進めている間、不愉快だったのだ。

    返事をするわけではないから、と言い聞かせながら、な。

    ところが彼女は私が大変な年寄りか少しだけ年寄りなのか、また丸禿げなのか少しだけ禿げなのかということ

    を問うてきた!

    ああ、この一瞬は大そう愉快だった。

    私の機嫌はこれで一変に直ってしまった。

    仕事の合間のことだったので、秘書がすぐそばにいたのだが、私の表情がころころ変わるのでずいぶん怪訝な

    顔をしていたな……。

    この手紙には返事を書いてみたいと少し思ったが……。やめておこう。自分で決めたことなのだから。






















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