1910年2月8日(火)
    ジュディより手紙が届く。

    良いニュースと悪いニュースがあった。

    まずは良いほうから記しておこう。

    彼女の書いた詩が校友雑誌に掲載されたこと。

    手探りにでも、自分に足りない事を補い、ちゃくちゃくと前進をしていると受け取って良いだろう。

    もし読むのであれば送るとある。もちろんだ。明日、朝一番に秘書に電報を打ってもらおう。

    しかし……同封をしてこず、読むかどうかを気にかけているところを見ると、ジュディは私が手紙を読んでいない

   と思っているのだろうなあ。

    次に、いつもの学業に関すること。これは、普通の話題といって良いだろう。
    ジュディが書かなければ、私は女子大学で、学生が屋根から縄で滑り落ちるなんてことをしているとは知らずに

   いただろう。どうして体育の授業でこのようなことをするのだろうか。

    危険でなければ私が騒ぐ必要もないのだろうが、しかし、気になる。

    さて、最後。

    悪いニュースについて。

    これには、さすがに不機嫌にならずにはいられなかった。

    失望したと言って良い。

    ジュディは数学とラテン語を落第した。今までの手紙で、ずいぶんと読書に時間を割いていたので、不安に思わ

   なかったわけではないが、しかし、読書は彼女には必要な事であるし、それを差し引いても勉強はしていると思

    っていた。

    しかし、不十分であったということが結果として判明したわけだ。

    さて、こういうときには返信を一切せず、という約束が裏目になる。この約束を守る限り、私はジュディに叱咤す

   ることもできないのだ。

    援助者としては、なんとも歯痒い。

    しかし、ジュディもじゅうぶん反省しているようであるし、再試験に合格し、以後落第などという失態を二度としな

   ければ、今回のことだけは水に流そうと思う。

    人間、一度躓けば、次回は転ばぬよう注意をするものだ。

    彼女の頑張りに期待し、ここは静観しよう。



  
























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