1910年3月28日(月)
    17日に再試験直前の、鬼気迫ってすらいる文面の短い手紙が届いていたが、今日届いたのは結果報告の手

   紙……なのだろう。

    試験は二つとも合格したそうだ。

    喜ばしい、のだろう。

    次回以降は再試験などということにならないように、精進してほしいものである。

    しかし、正直に言って今回の手紙は困惑している。

    今までにも、ふざけているのか、そのように装っているのかは微妙なところだったが、私からの返信を望んでい

   るようなことを書いてきていた。しかし、約束通り、私は返信をしなかった。 

    そこに何の落ち度がある?
    もともとそういう約束だったではないか。

    不機嫌も露わに、返信がないことを詰られてもどうしようもない。



    落第とは別の意味で、私はとても失望している。

    やはり、女の子に高等教育を受けさせるなど、無駄だったのだろうか?

    当初の決め事を守る事もできず、どうしてこれからも慈善を続けられよう。

    後見人として充分なことはしているつもりだ。

    私の素性が誰であるか、また直接対面することが必要だとは今も思えない。

    ジュディが家族を欲しがっているのは、これまでの手紙でもわかっていたが、 私はただの後見であり、家族に

   なれるわけではない。

    人とのつながりを望む気持ちはわからなくもないが、それを私に求められても困るのだ。

    ジュディが自分で自分の居場所を確保するしかない。厳しいようだが、そうするより他はないだろう。

    彼女の後見を引き受けた以上、最後まで遣り通そう。

    だが、今後女の子に学資の援助をするかどうかは、残念ながら検討したほうが良さそうだ。











  
























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