1910年5月4日(水)
    久しぶりにジュディからの手紙が届いた。

    病気からも回復していつもの彼女に戻ったようだ。

    そして今まで手紙を書かなかった反動か、今回の手紙はこれまでにないほど長いものだった。

    いつのことだったかはっきりと覚えていないが、いつだったかの評議員会で椅子にいたヒキガエルに気付かず

   座っていた御仁がいたが、あのいたずらの犯人はジュディだったのだということを今回初めて知った。 

    あの時は、ご婦人方は悲鳴を上げるわ、紳士連中の中にも真っ青になる者はでるわ、院長は叫ぶわで大変な

   騒ぎだったなあ。

    院長がカエルの汁が染み付いた上着やズボンを洗わせたが、結局綺麗に落ちなかったと記憶している。

    もう過ぎたことであるし、彼女もその当時に罰を受けたので今更どうこうするつもりはないが、しかし…女の子で
   ヒキガエルを集めたがるのはよくあることなのだろうか…?



    そして、カエルの次はムカデの話だった…。

    最初に手紙を開いた時に目に入ったのが、細長い棒の上下に曲がった線が幾つも描かれており、これは何だろ

   うと思っていたのだが、それがムカデの絵だったのだ。

    彼女たちの寮にはムカデがよく出没するらしい。

    そのムカデはマクブライド嬢が半分叩き潰したというから勇ましいものだ。

    私の知っているご婦人方は、虫という虫を見ただけで卒倒しかけるのだから。



    また、最後にはジュディの「ついてない一日」が詳細にしたためられてあった。

    笑っては悪いが、これだけ続けばちょっとした喜劇と化すもの。

    ダンベルにぶつけられた肘は大丈夫だったのだろうか…。

    折れたりはしていないようだが、しばらく痣になっていそうだ。



    ところで、最後に書かれていた一文にどうしたことか心惹かれた。

    何のことはない、『返事がほしい』ということで、それは決してしないことにしていたのだけれども(病気の時のは

    あくまでも特例だ。)。

    だが、顔も知らないこのジュディという少女は、どんな子なのだろうか?

    好奇心がもたげて止まない。

    しかし、一度手紙は書かないと約束しているのに、それを自ら破るのは気が進まないのだ。

    いっそのこと、会いに行ってみようか。

    ジュリアに会いに来たといえば、特に不自然ではないだろう。

    ただし、ジュリアに会いに行っても、ジュディに会えるかどうか確実ではないことが難点か。

    本当に実行に移すかは定かではないが、そのことを考えるとわくわくするのは確かだ。
















13ページ目   目次   15ページ目