1910年5月19日(木)
    ジュディより短い手紙が届いた。

    夏休みの事で、リペット院長から手紙が来たとのこと。

    内容は夏休みの間はジョン・グリアに戻って働くようにということだそうだ。

    彼女の夏休みのことについては、そういえば私も考えようと思っていたのだが、すっかり忘れていた。

    日記を読み返すと、1月にそのことを思いついている。冬の最中に夏休みのことを考え続けるのは無理だった

   のだろう。

    早急に考えておこう。



    






    5月26日(木)

    夏休みの行き先が決まった。

    私が子供の頃に過ごしたロック・ウィローだ。

    急な願いだったが、センプルから快く引き受けてくれると返信してきた。さっそくジュディに伝えよう。

    まあ、返事は私ではなくて、グリグスがするのだが…。

    そういう約束になっているのだから当然だ。

    当然なのだが…。

    詰まらないものだな、自分で返事ができないというのは。

    グリグスは、当然だが必要なことしか手紙には書かない。

    だが、私ならもう少し彼女を喜ばせたり、やる気を出させたり、必要な時には慰めることだってできるはず。

    しかし…。

    私の方から約束を反故にするのは…いかんだろう?

    



    上のところまで書いて二時間が過ぎた。 

    その間、自分の心を正直に見つめ、結論を出した。

    私はジュディに興味を覚えている。そしてもっとよく知りたいと思っている。

    少し変わった、だけどとびきり面白い彼女のことを。

    だからこそ、自分で直接返事を書けないことをこんなにも気にしているのだと。

    認めよう。

    すべて認めよう。

    しかし、私は打開策も見つけ出した。

    直接会えばいいのだ。これなら私が返事をしないという約束を破ったことにはなるまい。

    彼女にとって「あしながおじさん」というのは、年よりで金持ちのジョン・スミス氏であって、ジャーヴィス・ペンデル

   トンではないのだから、バレる心配もないだろう。

    善は急げだ。

    明日、大学に行ってみよう。




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*ロック・ウィロー…農場。ここはもとはペンデルトン家のものだったけど、ジャーヴィスの乳母をしていた
            センプル夫人にあげたという経緯があります。