1910年5月27日(金)
    行ってきた。

    思いつきで行動すると、思いがけない不都合が起きる事はよくある。道に迷ったり、会おうと思っていた人に

   会えなかったり、必要なものがなかったりなど様々と。

    しかし、今回は運が良かった。

    午前中で仕事をやっつけ、大学に向かい、姪に面会したいと申し込んだ。

    しかし友人二人―ジュディとマクブライド嬢だ―と一緒に現れたジュリアは、どうしても授業が抜け出せないと

   言って、案内をジュディに押し付けたのだ。

    幸いジュディはこの時間、授業はないということだったので、秘密の後見人としては彼女に授業をサボらせなく

   て済んで、大変安心したと付け加えておこう。 
    彼女の案内で校庭中を歩き回ったが、その間はごく普通の、当たり障りのない話をして様子を窺った。

    手紙のジュディは、孤児であることを悲しみ、怒っていたが、直に会った彼女はなかなかどうして普通の娘に

   見えた。だがそれは、やはり手紙にあったように、孤児であることをひた隠しにしているがための演技が混じっ

   ているのかもしれない。

    だが、それを聞くわけにはいかなかった。

    そうだろう?

    『ジャーヴィス・ペンデルトン』はジルージャ・アボットと初対面なのだから。

    しかしそれでも、彼女は本質的に明るい人であるのは間違いないと思う。(これまで告白された悪戯の数々を

   考えてもそれは明らかだが。)

    それで、もう少し彼女と話がしたかったので、案内が終わるとそのまま応接室には戻らす、喫茶部へ行った。

    少し強引だったかもしれない。

    だが結果的にジュディは打ち解けてくれたので、まあいいだろう。

    彼女は大学での出来事を面白おかしく話すのが上手で、時折真剣な顔で小生意気なことを言ったりもする。

    くるくると表情はよく変わり、今が楽しくて仕方がないといった様子だった。

    そうしている間についつい時間を忘れてしまい、気が付けば汽車の時間が近づいていた。

    ジュリアには別れの挨拶くらいしかできなかったが、彼女の場合は親戚なので、会おうと思えばいつでも会える

   し、会いたくないときでも会わなければならないこともあるのだから今回は運がなかったということだろう。

    まあ、事前に連絡をしておけばこうはならなかっただろうが、何しろ前夜に思いついたばかりだったから。

    次は、覚えていたら先に連絡を入れようと思う。何しろ、場所が女子大学なのだから。 

  
























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