1911年3月7日(火)
    試験の結果は問題なし。

    一年生の時のあの落第がなければ素晴らしい成績を修められただろうに。

    今更言っても仕方のないことだけど。

    

    就寝前の読書のことは以前にも手紙に書いていたが、今ジュディが読んでいるのは『ハムレット』のようだ。

    シェイクスピアがずいぶん気に入ったらしい。

    思ったのだが、確か現在ブロードウェイでは『ハムレット』を上演しているのだが、ジュディを観劇に招待するの

   は…。危険、だろうな。さすがに。

    今までは怪しまなかったとしても、ここで私がジョン・スミス氏であると感付かれる恐れがある。
    しかし、せっかくジュディが興味を持ったものがあるのだし、観劇も小説を書く上で非常にためになると思う

   のだが、どうだろうか。

    さすがにジュディだけ招待するのもおかしいから、ジュリアを招待するのがメイン、ということにしておいて、

   同室の二人も誘うというのが一番無難な形か。

   少なくとも、プリンストン大学の校旗などよりも、ジュディは喜んでくれると思うのだが。



   ふと、思った。

   ジュディは私がジョン・スミス氏だとわかったら、どうするだろうか?

   ジャーヴィスとして彼女の前にいるときに聞いてくるだろうか。それとも、手紙でほのめかしてくるだろうか…?

   彼女の想像している後見人のように、ジュディの父親か祖父といってもいいほどの年よりでないと知られたら…。

   失望、するだろうか?

   ジャーヴィス個人としては好かれている自信はあるが、それでも秘密を知った後もジュディは変わらずにいてくれ

   るだろうか…。 

  

   私は、ジュディに私がジョン・スミスだと気付いてほしいのだろうか…?









  
























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