1911年6月7日(水)
    ジュディからの返信が届いた。

    長い手紙のすべてが私の決定に対する不服と、それを撤回してくれるようにとの懇願だった。

    その時の私は、とても言葉にできないほどの衝撃を感じた。

    場合によっては、その手紙を激情に任せて握りつぶしていたかもしれない。

    

    ジュディが私にこうまで反抗してくるだなんて…。

    これまでにも、彼女は私に不満を訴えてきたことはあった。

    だがそれは、私からの返事がほしいのだということや、私が不用意に送った小遣いについてのことであって、

   ジュディならではの矜持や寂しさの表れでしかなかった。 
    だが、今回はそれまでとは違う。

    彼女は必死だ。

    ロック・ウィローが嫌なのではなく、目の前にそれよりも楽しいと思えるものが手に入りそうなので、そちらが

   良いというわけだ。

    なるほど、彼女が挙げる理由の幾つかについては同意をしてもよい。

    年が近く話の合う友人はいた方がいいのだろうし、彼女の境遇を考えれば、孤児院でも農園でもない家庭の
   切り回しを覚えることも必要だろう。それが今すぐ必要であるかは、考える余地はあるが。

    だが、本当にそれだけだろうか。

    彼女が真実楽しみにしているのは、ほんの一行だけで書かれたことではないのだろうか。

    ジミー・マクブライドと過ごすことが。

    なんて腹立たしい!

    

    

    一服して、少し頭を冷やしてみた。
    冷静になってみると、私のこの感情の起伏はどうも度外れているとしか思えない。

    招待されたのがジュリアだったら、私はここまでイラつくはずはないのだ。

    まったく、私は実の姪よりもジュディの方が可愛いらしい。

    だがどうにも否定しようのない事実だからまた困ったものだ。 

    しかし、それでも構わないだろう。

    何しろ、ジュリアには彼女のことを現在から将来に至るまで考えてくれる身内がいるのに、ジュディには彼女自身

   の他には、私しかいないのだから。

    私はジュディの後見人だ。兄代わりとしても叔父代わりとしても(父代わりはさすがに御免こうむる。さすがにあ

   んなに大きな子供のいる年ではないのだから)余計な虫がつかないようにするのも、役目の一端だ。

    そうだとも!

    やはりアディロンダック山行きは承知できない。だが埋め合わせはしよう。

    乗馬もカヌーのこぎ方も猟銃の撃ち方も、戸外での運動も、すべてやらせてあげよう。

    私が教えるのだ。どれもこれも、ロック・ウィローでもできることなのだから。

    








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