1911年9月16日(土)
     夏休み最後になるであろう手紙に、ひどく動揺を起こした。

     ああ、まだ頭がくらくらしている…。

     気分を落ち着けるためにもこの日記に記してしまおう。そのうち、冷静になれるだろうから…。

     

     ジュディの原稿が出版社に売れたそうだ。私がロック・ウィローに滞在していた時に送らせた、あの作品だ。

     これで彼女も作家の仲間入りである。まだひよこどころか、卵ではあるが、今後の活躍にも期待したい。

     いや、期待という意味では私の予想を遙かに上回っていた。なにしろ想像力に富んでいるとはいえ、落ち着

    いた環境で勉学や執筆に励むということをしたことのない娘だったのだから、デビューするまでに時間はかかる

    だろうと考えていたのだ。
     それがどうだ!大学在籍中にもう作家になってしまったのだ。嬉しい誤算である。

     作家の卵であるジュディに願うのは、今後も意欲的に執筆を続けてゆくこと。そのために必要な経験を積む

    ことだ。



     さて、もう一つの知らせについては非常に頭の痛い思いをさせられた。

     正直、彼女は何を考えているのだろうと感じたのだ。

     ジュディは奨学金を受けることにしたと言ってきたのだ。夏休み前の手紙には一言も触れられていなかったが、

    ロック・ウィローに行く前にすでに申し込みをしていたのだそうだ。

     なぜ、そんなものを受けるのだ!?私という援助者がいて、どうして…!

     受けられる奨学金は、寮費と授業料の免除だ。つまり、これを私が承知してしまえば、今後彼女に渡すのは

    小遣いだけとなる…。それすらも、ジュディは自分で生み出そうとしているのだ!

     執筆はまだ良い。小説家として生計を立てられるようになるのであれば、私の目的も叶ったといえる。

     しかし毎月の小遣いに足りるものを書けるとは限らず、そんな時には個人教授をするつもりのようなのだ。

     なんて馬鹿げた話だ!
     そんなことをさせるために、私はジュディを大学に通わせているわけではない。作家修行とは関係のないこと

   に時間を費やし、神経をすり減らすなど、私に対する侮辱にも等しい。

     私は彼女を愛おしく思っているが、それとこれとは話は別だ。断固として抗議をしなくては…!





  
























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