1912年3月7日(木)
    久しぶりに、ジュディの本領を発揮したような手紙が届いた。

    このところ、喧嘩したり―奨学金のことは、まだ納得していないのだ―、不愉快だったり―マクブライドの若造

   のせいだ―、短かったり―試験中なのだから仕方がないが―したので、少し嬉しい。

    大学総長からの訓戒を受けた彼女は、スミス氏に対してなれなれしくし過ぎたのではないかと考えたようなのだ。

    そこで、仕切りなおしをすると前置いた上で、恒例の学校生活について書き綴ってきた。

    内容は、特に目を見張るようなことはない。

    試験に受かったとか、化学をやめて生物を選択したとか、水泳の練習をはじめるつもりだとか…。

    天気の話題が終わりの方にあり、そして私の健康を気遣う一文で結ばれていた。

    これは、これだけで読めば面白くはないのだ。これに一番近い手紙というのは、ジュディ以前に援助した少年
   たちからの、学校生活報告の手紙だ。彼らは生真面目に、かしこまって、毎回こんな感じの手紙を寄越していた。

    もちろん、彼らは小説家になるわけではないのだから、面白おかしく書く必要はないわけで―ジュディも別に面白

   おかしく書いているわけではないのだが―いたって当然のことなのだが。

    しかし、ジュディという少女と彼女がこれまで書いた手紙を知る者にとっては、この手紙はまた別の意味で笑いを

   誘う。柄ではないというわけではないが、どこか背伸びをしているようで微笑ましい。

    いや、彼女だって真面目な手紙をちゃんと書けることを私は知っているが…。

    だが、賭けてもよいが、次の手紙では元に戻っているだろう。

    彼女はこれまでにも小説に感化されて、その時々に文章を真似たり引用したりしている。今回のはたまたま小説

   ではなく大学総長から影響を受けたというだけのことだ。

    …と、思うのだが、今後もこんな調子の手紙が届くようなら元に戻るように言わなければ。



















  
























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