1912年4月29日(月) 結局、前回の賭けは当たったわけだが、また由々しき事態が発生してしまった。 先々週にジュディに会いに大学へ向かったのだが、運よくといえばよいのか、途中で彼女に会ったのだ。 だがその時彼女は一人ではなく、ジュリアとマクブライド嬢も一緒だった。そして汽車の時間が迫っているという ことで、挨拶もそこそこに別れたのだ。 どこへ行くのか興味がなかったわけじゃない。だけどとても急いでいたようだし、女の子たちのすることなのだか ら、彼女たちにとっては重要な、しかし実際にはちょっとした用事でもあるのだろうと思ったのだ。買い物とか、買い 物とか、買い物とか。 だがあの大きな荷物で気がつくべきだった。 彼女たちはプリンストン大学に行ったのだ。あのジミー・マクブライドのいるところへ。 パーティに出席することが悪いわけではない。しかし、後見人である私に相談をするべきではないのか?招かれ たのが交流のある女子大学というのならばともかく、そうではないのだから。いくら保護者としてマクブライド夫人が 付き添うとしてもだ。 しかし、この行動がまったく無断で行われたのには腹が立つ。なにより衝撃だったのは、ジュディがこのことをス ミス氏に相談したら反対するだろうと読んでいたことだ。 まあ、たしかに行ってもよいかと聞かれたら、駄目だと返事をするよう、秘書には言うに違いなかっただろうが…。 まさかと思うが、スミス氏が私だと気付かれたのだろうか? だから、相談してくれなかったのだろうか。 私が彼女に対してスミス氏として強権を発動したのは、そう多くない。夏休みにアディロンダック山へ行くことを 止めたことと、奨学金を受けないように行ったことくらいのはずだ。それくらいでダンス・パーティに出るのを禁止 されると思うものだろうか。 疑い始めればとまらなくなる。どうしたらよいのだろうか。 …いや、ばれたというのならば、それはそれで構わない。気付かれる可能性がある行動を、私はこれまで何度 もしてきたのだからな。 だが、それならそうとなぜ言わないのだろう。私を試しているのか、それとも確証がないのだろうか。それとも、 私の思い過ごしなのだろうか…。 |