1912年6月6日(木)
     久しぶりに遠出をしたくなったので、この夏の休暇にはヨーロッパ旅行をすることにした。もちろんジュディも  
    連れてゆく。方法もちゃんと考えてあるのだ。

     知人の娘たちがやはりこの夏ヨーロッパ旅行をするのだが、父親である某氏は行くことができないので、監督

    の婦人をつけて送り出すのだと聞いた。その婦人とはチャリティで何度か顔を会わせたことのあったので、私が

    後見をしている娘の面倒も見てくれないかと頼んだのだ。

     細かな打ち合わせも済んだので、さっそくジュディに連絡をしようとしたところ、この手紙が届いた。

     結論から言えば、私は出遅れてしまった。

     ジュディはすでに夏の予定を立ててしまったのだ。

     行き先はアディロンダックではない。そしてロック・ウィローでもなかった。
     マクブライド夫人の知人の娘の家庭教師をするというのだ。行き先はマグノリア(デラウェア州だな)。

     報酬は一ヶ月50ドルだ。

     奨学金だけではなく、本当に働こうとし始めている!

     生活のために働く必要はないと、何度言えばわかってくれるのだろう。彼女はまだ作家として、スタート地点に

    ついたばかりだ。才能に限界を感じているわけではない。家庭教師などすれば、自分の時間がなくなってしまう

    ではないか。せっかくの長い休暇だというのに…。

     私はジュディに、多くを学んでほしいとは思う。学校の勉強を予習するのは構わないし、やりたいのであれば

    それ以上の学問を始めたっていいんだ。だが、家庭教師など神経をすり減らすだけの仕事ではないか。なんの

    実にもならん。 

     ヨーロッパ旅行の方が遙かに得られるものが多いだろう。これはジュディのためなのだ。 

     絶対に止めてみせる。これまでの経験からゆくと、書面での通告と秘書の勧告では彼女を押し止めることはで
    できないだろう。だから、私が―J・ペンデルトンが直接会って気を変えるようにと説得しなければ。

     おお、そうだ、家庭教師云々に関して私が知っているのはおかしい。ジュディが自分で話まで、そのことを持ち

    出さないように注意しなければ。











  
























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*全国の家庭教師の皆様、申しわけありません…<(_ _)>