1912年11月19日(火)
     ジュディからの手紙が届いた。今回は非常に落ち込んでいるみたいだ。

     彼女は昨年の冬から今年の夏にかけて―例の家庭教師業をしている合間も使ってだ―長編小説を執筆

    していたのだそうだ。それが完成したので出版社に送った。

     それから二ヶ月の間、原稿が送り返されてくる様子はないので、すっかり出版、もしくは雑誌などに掲載され

    るのだと思い込んでいたらしい。ところがつい先日、その原稿が批評と忠告の書いた手紙と共に送りかえされ

    てきたのだそうだ。

     批評というのは、まあ、大抵耳に心地よいものではない。本気でアメリカ文学に貢献している気持ちになって

    いるジュディは、そんなのは少しも気休めになっていないと憤慨しているが、それでも一方で出版者の言葉を

    真摯に受け止めているようだ。その小説はどうやら上流階級のことを扱ったもののようで、ジュリアの家に滞在し
    ている間に材料を集めたが、観察が不十分だったと分析している。

     そして忠告というのは、『あなたはまだ学生のようだから、学業に専念し、小説を書くには卒業後にしたらどう

    か』という主旨らしい。

     それで彼女はすっかり力を落として、送り返された原稿をわが子を火葬する思いで焼き捨てたというのだ。

     作家になろうとするならば、このようなことはままあることなのだろう。

     これから先にもないとはいえまい。

     しかし、どれほど辛かったことか。側に行って力づけてやりたい。

     私には作品のアイデアや筋を考えることはできないけれど、ものの良し悪しはわかっているつもりだから、その

    あたりの指摘はできるだろうし、それに駄目だったときにも慰めることはできるだろう。

     ああ、この遠く離れた距離のなんともどかしいことか…!



     だが、彼女は書くことをやめることはない。この辺りが彼女は作家になるべくしてその才能を有していると私に

    思わせる所以だが、悲しみに沈んだまま寝床に入り、そして翌朝目覚めた時にはもう新しい筋が浮かんでいた

    というのだ。

     なんてたくましいのだろう。

     彼女の生命力は目がくらむほど明るいのだ。

     その気力がある限り、ジュディはずっと小説を書き続けるだろう。

     私は彼女にエールを贈ろう。ジュディが望むとおり、無言の同情も添えて。



  
























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