1912年12月16日(月)
     そろそろジュディへのクリスマスプレゼントを決めてしまわなければと思っていたところに、手紙が届いた。

    プレゼントはすでに十個ほど決まったのだが、もう少し増やしたい。なにしろスミス氏からだけでなく、ジャーヴィス

   からの分も必要なのだから。

    今日の彼女は思索に耽っている感じだ。

    夢で「ジュディ・アボットの生涯と書簡」という新刊書を手渡され、それを読んでみたのだが、墓碑銘が書かれてい

   るところを読もうとして目が覚めた。もしもそこまで読めたのなら、自分が誰と結婚していつ死ぬのかがわかったの

   に、と残念がっている。

    本当に自分の人生が書かれた本があったら、それを読むだろうか?

    私なら、そうだな、きっと読みたくてウズウズするだろう。だが、その中にはきっと知りたくなかったこと、起こって 
   ほしくないことだって書かれているはず。どんなに幸福な人間だって、幸福しかないということなんてありえない

   のだから。

    だから私はその本を手にとって、読むか読まないか散々迷いながらそっと元に戻すだろう。

    そしてその本を物置の置くに放り込んで忘れてしまうように言い聞かせるか、燃やしてしまうかするだろう。

    読んでみたいけれど、知らないほうが良い。特に、その本に書かれていることが一切変更不可だとしたら尚更。

    かといって他の人間に読まれるのはごめんだ。だから隠すか壊すかするしかないではないか。

    おやおや、私も彼女につられて止め処もなく考えてしまったよ。

    でも、ジュディの生涯が書かれているその本には、ジャーヴィス・ペンデルトンのことがどれくらい書かれている

   のだろうね。彼女の友人としてのほんの数行か、それとも…もっとたくさんか。 

    いや、きっとそれもまた、知らないほうがよいのだろう。

    

   追記 ジュディは新作の小説を順調に書き上げている。現在、四章までが書きあがり、五章の下書きに取り掛

   かっている。全何章構成になるのかはわからないが、全力を尽くしてほしい。頑張れ。 













  
























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* 特に原作には書いていないのですが、ジャーヴィスはジャーヴィス名義でクリスマスプレゼントを
贈らなかったのかな…。
この時点で結構親しくなっているから、別に贈ってもおかしくはないと思うんですけどね。