1913年6月5日(木) 昨日はジュディの卒業式だった。 卒業証書の授与中に雨がぱらついたが、後はまあまあの天候だった。 それにしても、卒業式でのにぎやかさは、男子校でも女子校でも変わらないのだというのが、正直な感想だ。 今でも女の子たちの歓声が頭の中で鳴り響いているみたいだ。自分が騒いでいる分には気付かないものだが、 一歩引いた立場から眺めると、ずいぶんと騒がしいものだと思う。…まだ頭が痛い。 そして、とうとうあのことが起きた。 かねてより恋敵だと考えていたジミー・マクブライドとの対面である。やはりこれは私の杞憂などではなく、彼は 正真正銘、ジュディに恋をしているのだとわかった。 普通、妹の友人というだけの娘に対し、バラの花束など渡すものか! 向こうもそう感じたのは伝わってきて、姪の友人である彼女に私がバラの花束を渡したのを、一瞬強張った表 情で見たのだ。ジュディにすれば私のことを隠し立てする理由もないので、以前から話をしていたり手紙に書いた りしていただろう。 ジミーは、ジュディがあれほど好いているマクブライド嬢の兄君であるだけあって、感じの良い若者だった。 顔立ちも悪くはない。もっとも、髪の色が派手な赤色なので、それで多分に目を引くところもあるようだが。 卒業式では祝いに来た者から贈られた花束を持って臨むのが慣例となっている。私と彼は密かにどちらの 花束をジュディが持つのだろうかと、やきもきしていた。 結果は…考えるまでもない。 勝利は最初から「あしながおじさま」のものなのだ。 私が贈った花ではあるが、勝ったのは私ではない。 彼女にとっては、目に見え、話しもでき、どのような相手なのかわかる私(やジミー)などよりも、顔も見えない、 話もできない、どんな相手なのか、本当のところを何一つしらない「スミス氏」の方が大事なのだ…。 …少し空しくなった。 私は彼女の頭の中にしかいない自分の分身に勝てないのではないか? いや、だからといって、自分の正体を自分から明かすようなことはすまい。それはフェアではないのだから。 6月23日(月) ジュディから手紙が着た。ロック・ウィローに移り住み、充実した生活を送っているみたいだ。 しかし、卒業式にスミス氏が来なかったことで氏のことを完全に失望してしまったようだ。 一応、彼女との約束は、在校中に毎月一回手紙を書くということなので、もう書きたくないというのであれば、 そうしても構わないことにはなるのだが。 相変わらず、小遣いは送っているので二度と書かないということはないと思うのだが…。 ちゃんとジャーヴィスとして彼女と手紙のやりとりをしているので、スミス氏はもう不要といえば不要なのだが、 どうしたものか…。 何か理由をつけて終了させることも考えた方がいいのかもしれない。 |
*「あしながおじさん」には書いてなかったような気がしますが(←読み返せ)
サリーは赤毛なのだと「続あしながおじさん」に書いてあります。
他に手がかりもないので、ジミーも赤毛ということにしときました。