ジャーヴィス・ペンデルトン氏は病気回復後もなかなか体力が戻らず、血色悪く非常に疲れているようなので、 しばらくの間空気の良いところで療養すべしとの医者の通達を受けた。 …まあ、彼とは長い付き合いなので、我が親戚たちの攻勢を見かねて助け舟を出してくれたということだが。 ともかく、これで大手を振ってニューヨークを離れることができた。 行き先など考えるまでもない、ロック・ウィローだ。 ようやくジュディに会える…! 電報を打ち、そうそうに準備を整えて出発する。 農場の到着すると、そこではすでに先客がおり、大層賑やかな様子だった。 客人はサリー・マクブライド嬢で、ジュディが婚約したということで、祝いにきてくれたのだ。 ロック・ウィローでの歓迎ぶりときたら、ニューヨークとは180度も違っていて、まるで全然別の国へ来てしまった かのようだった。 ジュディが嬉しそうににこにこしているのは当然として、リジーは何度もおめでとうございますと繰り返し、最後の 方では感極まって泣き出してしまった。 マクブライド嬢は良家の娘らしく、品の良い笑みを浮かべて祝いの言葉を述べてくれたが、その目の奥はいたず らっぽく笑っていた。というのも、ジュディはマクブライド嬢には私があしながスミス氏であるということもすべて話し ており、当時のジュディを知る身として、非常に興味を覚えているようなのだ。 後になってこっそり、一体いつからジュディに目をつけていたのかと聞かれたときには、さすがに参ってしまった。 げに、女性の好奇心ほど始末に終えないものはない。 そのマクブライド嬢だが、結婚式でブライズメイドをしてもらうことになった。 ジュディと一番仲が良いし、この場にいたということですぐに承諾をもらうことができたからだ。 そして話が結婚式で誰を招待するかという話に移ったとき、ふいに姪のことを思い出した。 ジュリアはジュディとマクブライド嬢と四年間ずっと同室で、仲が良かったと思っていたのだが、やはり疎遠に なってしまったのだろうか。姉たちが頑強に反対しているから無理もないと思うが…。 そう思って訊ねたところ、女性二人はどうして私が知らないのだと半ば責めるように言ったのだ。 なんと、ジュリアはロンドンの大伯母の家に預けられたというのだ。 ニューヨークの社交界で、ペンデルトン家の『醜聞』が広まるの時間の問題だ。そうなると年頃のジュリアの縁 談話に支障が出てしまう。だから、まだ評判の届かないロンドンでしばらく過ごさせ、良い相手が向こうでみつか ったらそのまま話を進めてしまうという方法に出たらしい。 我が姉ながら大げさというか、やることが極端というか…。 しかし、私とジュリアはもともと仲の良い叔父と姪の間柄ではないし、姉夫婦が私のところへ文句を言いに来る 時も別段彼女を連れて来ることもない。それにジュリアのことが話題になることもほとんどないのだから、私が彼 女の動向を知らなかったとしても、責められることではないと思うが。 数日前に、ロンドンから届いたというジュリアからの手紙を読ませてもらったが、彼女自身は案外さばけており、 親の世代の問題が彼女たちの友情に殊更ヒビを入れなかったことに、深い安堵を覚えたものだった。 そうそう、ジュリアは、結婚祝いとしてウェディングドレスに飾りつけるためのレースをパリで探してこちらへ送ると 伝えてきた。それはいいのだが、そしてここで書いてもどうしようもないことなのだが、ジュリア、そういうことは私に も教えてもらわねば、困るじゃないか。 ドレスの用意は、私のほうでも進めつつあったんだ。 |
*ジュリアは「続あしながおじさん」に一度も名前が出てきません。ジュディと親戚になったのになぁ…。
(や、「あしなが」にも「続あしなが」にもジャーヴィスとジュディの結婚が反対されたとかは全然書かれてなかったんですが…。
でも、やっぱこの手の問題(結婚反対のこと)は出てくるのではないかと思いまして、それ絡みでジュディと疎遠になってしまったのか、
単に作者が話に絡めなかっただけなのか…)
私としては、「ジュリアは近ごろ大そう私を好きになってきた」という、3年生の時の手紙の一文から、親たちのこだわりと自分たち
(ジュディ、ジュリア、サリー)の関係は関係ないと思ってほしい、と思いこのような展開にしてみました。