そういうことならばジュリアのレースを使わせてもらうが、もしもそのことを知るのがもっと遅かったら、私の

    用意していたレースが無駄になってしまうではないか…。まだ細かいところまでは決めていないので、どうに

    かなるが。



    ともかく、親戚たちのやかましい声が聞こえないだけで、私の体調はあっという間に良くなってしまった。

    ロック・ウィローについた翌日には(気を利かせてくれたのか)マクブライド嬢が帰途につき、その見送りをがてら

   私とジュディは田舎道を散策した。

    次の日には釣りをし、その次の日はピクニックをした。スカイ山の頂で、私たちは以前この山に来た時の焚き火

   の跡が残っている岩を発見した。雨に洗われて大分薄くなっていたけれど、私たちにはすぐに見分けがついたの 
   だ。

    私たちは顔を見合わせ、同じことを考えている人間同士が目で合図をするように互いに目と目で会話をすると、

   三年近く前のあの時と同じ場所で昼食を作った。 

    こんな風に、ロック・ウィローでの生活はひたすら穏やかで楽しく、ニューヨークに戻るのが嫌になるほどだった

   が、そろそろ戻らなければいけない時期になっていたので、私たちは農場を離れたのだった。

    名残は尽きないが、ジュディも一緒なので、我慢することにする。

    今度は私と逆になり、彼女がしばらくの間、ニューヨークで過ごすのだ。

    部屋なら余っているので、我が家に迎えても一向に構わないのだが、そこはそれ、世間の目というものもあるし、

   第一我が家ではいつ親戚の突撃があるかわからないので、非常に残念だが彼女にはホテルで暮してもらうことに

   したのだ。

    それでもたまには昼食を一緒にとれるだろうし、仕事が終われば共に時間を過ごすことができる。

    それに、まだ婚約指輪を渡していないから、それも探せるし、彼女がいる間に結婚後に暮らすようになる部屋を

   整えたり、必要な家具やら何やらを買うこともできる。

    新しい衣装も誂えてやれるし、それ以外にも観劇に出かけたり音楽を聴いたり、都会でないとなかなか出来な

   いことをすることもできる。

    …なんだ、それほど残念がることでもなかったのだな。



    ホテルには、毎朝花を届けさせよう。

    彼女が芳しい香りとともに目覚めるように。

    

    会えない時間のやるせなさは、会えた時の喜びのスパイスに変わるように。

    私たちが家族になるまでのしばらくの間、こうしてじっくりと過ごしてゆこう…。




















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