私たちが婚約をしたのは秋だった。

    その頃燃えるような赤や鮮やかな黄色だった葉は今ではほとんど散って、寒々しい枝を空へと投げかけている。

    太陽は一日、一日と短くなり、憂鬱な冬へと移り変わっていった。

    灰色の空、身を切るような冷たい風。長い夜。

    冬を形容するときに真っ先にでてくるのは、こんな風な陰気な言葉の羅列だ。

    もちろん、赤々と燃える暖炉やクリスマス、夜会に次ぐ夜会―私はそんなに出席する方ではないけれど―、  

   なんてものもあるけれど。

    だからって、冬がどの季節にも増して好きだ、という人はあまりいないんじゃないかな。

    少なくとも、私はそうだけど。
    冬よりは暖かな春が好きだ。そうでなければ、過ごしやすくなる秋が。

    夏はあまり好きではない。暑すぎるからね。

    それで、そうそう、冬の話だったっけ。私の好きな季節の話じゃなくて。

    今は冬だ。はっきりと冬だ。季節だけではなくて、私の気持ちも冬のようなんだ。寒々しくて冷たいんだ。

    それというのも、我が家にはジュディのものがずいぶん増えたのに、当の本人はまだここに住んでいないからだ。

  

    先日、新生活に必要な買い物が全部終わった。

    衣装ダンスのような大きなものから、花瓶のような小さいものまで、全部だ。

    それでジュディは一度ロック・ウィローに帰ることとなったのだ。まだあちらに荷物が残っているので、整理しな

   くてはならないからだ。

    次にこちらへ来るのは、結婚式の二日前になるという。

    そういうわけで、私にはしばらくの間、共に夕食や観劇を楽しみたいと思う相手がいなくなってしまったのだ。

    ジュディがいないニューヨークなんて、砂みたいなものだ。少しも面白くない。

    荷物なんて、全部リジーにまとめて送らせればいいのに。向こうに残してあった荷物なんて、大学で使った教科

   書だの、ペンやインクや原稿用紙の束だのといった、すぐに必要にならないものや、ニューヨークでいくらでも売っ 

   ているものばかりだろうに。

    しかし、いつかは春が来る。

    少なくとも私の春は、季節の春より先に来ることがわかっている。

    それを楽しみに、療養の間溜まった仕事を片付けておくことにしよう。結婚したら、今度はヨーロッパ旅行に行く

   ことになっているのだしね。
























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婚約期間というのはどれくらい取るのが普通なのかよくわからないのですが
「あしながおじさん」が終わったのが10月なので、冬の間に結婚したのかな、と。
(とかなんとか書いといて、欧米では婚約から結婚まで半年以上空けるのが普通だったりしたらどうしよう…)