Something old,      (何か古いもの)

    Sonething new,      (何か新しいもの)

    Something borrowed, (何か借りたもの)

    Something blue,    (何か青いもの)

    and a sixpence in her shoe.  (そして靴の中には六ペンス)

      

     そして結婚式当日となった。

     私たちの前途を祝福してくれるような素晴らしい天気で、式後のパーティも含めて和やかな―賑やか、かもし

    れない―うちに終わった。
     そういえば、ジュディは花嫁が幸福になるというまじないをすると決めた時、笑いながらこういったものだ。

     自分は大学に入るまで「マザーグース」なんて知らなかったのだから、こうして古い歌にもある装いを自分も

    するのだと思うとなんだか変な気持ちになる、と。

     そんな彼女が決めた4つの「何か」は、以下の通り。

     新しいものはヴェールやドレスなど、衣装一式。

     借りたものは、マクブライド夫人から、夫人が結婚式の時に使ったハンカチを。こういうものは、同年代の友人

    から借りることが多いということだが、ジュディが招待した友人の中では結婚した女の子はまだいないので、夫

    人から借りることとなった。マクブライド家の女性は、嬢だけではなく夫人もジュディのことを大変好いているのだ。

     青いものは、人目につかぬところに身につけるのが良しということで、靴下止めに青いリボンを飾った。

     それから古いものとして、私はペンデルトン家に伝わる首飾りと耳飾のセットを用意しようと思っていた。

     本来なら、花嫁の先祖から代々伝わってきたものを身につけるというものだが、彼女に親族がいたとしても、

    どこにいるのかわからない。Something fourがSomething threeになるのは格好がつかないし、ならば変則的
    でも私が用意した方が良かろうと思ったのだ。 

     しかしジュディは、首飾りは大学三年生の時に「ジョン・スミス氏」からクリスマスの時に贈られたものが似合

    いそうだし、耳飾りはやはり同氏から四年生の時のクリスマスの折に贈られたものが良いというのだった。

     私は、それは何かの嫌味かほのめかしなのだろうかと勘ぐってしまったのだが、そうではなくて、彼女は彼女

    なりに考えて、古いものはすでに用意していたので、ペンデルトン家の宝石は必要なかっただけなのだった。

     ジュディはこんなことを言った。

     自分は私―ジャーヴィスのことだ―を愛しているので結婚するのだが、私のためには自分がお金持ちでなく

   ても良いから、両親と暮している娘でありたかった。自分がどういう存在なのか、私は充分すぎるほど知っている

   のだから、孤児であることを今更私が重要視していないことはわかっている。それでも私の親戚や社交界や仕事

   で付き合っている人びとの中にはこのことを重大に思う人も大勢いるはず―彼女には言っていないが、確かにそ

   の通りではある―自分はこれから先、大作家としてアメリカ文学界に君臨できるようになるかもしれないが、そう

   なるとしてもずっと先のことだろう。自分は私に、マイナスの評価を与えてしまうことになりこそすれ、プラスの価値

   にはならないのだ。両親がいたところで、ペンデルトン家のような家に嫁ぐのなら、相応のお嬢様でなければふさ

   わしくないと周囲は言うだろう。しかし、たとえ玉の輿狙いだと陰口を叩かれても、自分にちゃんとした家族があった

   のなら、彼らへの愛情や誇りを頼りに、「そんなものは問題にしない!」と撥ね付けられただろう。

    しかし現実の自分は、ジョン・グリアの娘でしかない。

    誇れるような家族も、支えになるような思いでも、何一つないのだ。

    それがひどく寂しくて心もとなく、これほど思い悩んでしまうのだから、この結婚は正しくないのではないかと思って

   しまうのだ、と。


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4年生の時のクリスマスプレゼントは具体的に何が贈られたのか書いていなかったのでねじ込んでみました(笑)
3年生の時には首飾りをあげていたのだし、その翌年にもなにか装飾品があってもおかしくはなかろうと。
なにしろ、4年生のときのプレゼントは17個もあったのですから…。