ミセス・ロビンソンは優秀な家政婦だ。彼女には十年近く働いてもらっているし、こちらも彼女のやり方に慣れて

   いるところもある。

    しかし、半年経って妥協も歩みよりもできなかったというのであれば、彼女にはやめてもらうより仕方がない。

    ここは私の家であり、ジュディの家だ。その我が家で主が不快な思いをさせられては本末転倒だ。

    腹の中でなら、何を考えていてもかまわない。主人が気に入らないのなら、それもありだろう。

    私だって、どうにも話も気も考え方も合わない仕事相手に遭う事はあるのだからな。

    だが、それを腹の中にしまっておけないのならば、それは問題だ。

    名家生まれの主人がいる名家で働きたいのであれば、そもそもミセス・ロビンソンの希望からはずれてしまった

   のだから、執着する必要もないだろう。  
    現在のアメリカ経済は順調で、それに比例してにわか成金というものも増えているので、自ら選択の余地を

   狭めているなとは思うが、まあそれは彼女の選んだ人生だ。私が思い煩うことでもあるまい。

    なんとかしてジュディを説得して、ミセス・ロビンソンを解雇することに賛同してもらおう。

    彼女の賛同は特別必要ではないのだけれど、事前に了解を取っておかないと、拗ねられるおそれがあるから

   なぁ。









   



















  
























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